見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

『歴史はべき乗則で動く』/『異端の数ゼロ』

手元に現物があるうちに,書いておこうと思う。ずーっと昔(四年前くらい?)に読み始めて,最後の方まで読んだのに,読みきる前になぜか放ったらかしになっていた本を二冊読んだ。

  

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歴史は「べき乗則」で動く

マーク・ブキャナン(Mark Buchanan・著)

ハヤカワ文庫

 

異端の数ゼロ

チャールズ・サイフェ(著)

ハヤカワ文庫

 

ハヤカワ文庫の「数理を愉しむシリーズ」読んだのはこれが初めてだが,どちらも素晴らしかった。世界の見方が変わるような本であった。強いて言えば "ゼロ" の方が読みやすいかな。多くの方に,おすすめしたい。

 

難しい話ではある。それをこれほどまでにわかりやすく,退屈することなく読ませるとは,プロのサイエンスライターの凄さを垣間見るようだ。一線の研究者が書く本ももちろん素晴らしいものが多いが,研究者への負担が大きい。研究者の出す実際の研究成果に対して,世に出回る情報がどうしても限られてしまう。その点,サイエンスライターという職業は,科学の難しい話を一般にわかりやすく語ることを専門としている。一般的に言って科学の面白さを伝えるという点においては,本職の研究者よりも一枚も二枚も上手と言えるだろう。

 

日本ではまだ見られない職業だと思う。いずれは日本でも本職のサイエンスライターが当たり前となるくらいに,科学が身近に感じられる世の中になると良いと願う。まずは,ここで紹介した二冊をもって皆さんも,科学の深みを,それから我々の生きる世界の深みを,じっくり味わってみてはいかがだろうか。

 

見聞読考録 2019/03/30

『湿地帯中毒』

中島淳博士の書かれた自伝「湿地帯中毒」をいただいた。前々から読みたい読みたいと思っていた本だったので,嬉しい限りである。しかもサイン入りでいただけるとは思いもよらなかった。僕は購入するつもりで声をかけたのに,ささっと送っていただけるとは,なんてデキた人なんだろう。かっこいい。ああいう大人に僕もなりたい。結局なんだかおねだりしたみたいになって,ごめんなさい。

 

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先日の生態学会の一般講演会で初めてお会いし,演者として一緒に登壇した。お話も面白く,会場の笑いを爽やかに攫っていく姿が印象的であった。

  

古くは「くろむし屋」という黒魔術的なウェブサイトを運営されていた「湿地帯の貴公子」こと「おいかわ丸」さんとしても,有名な方である。今回は十分に話す時間がなかったが,物腰の柔らかさと爽やかな笑顔の裏に危険な香りを漂わせ,ちょうど「くろむし屋」のウェブサイトのように,只者ではない雰囲気を醸し出していたように思う。

  

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↑「おいかわ丸のくろむし屋」のウェブサイト

http://kuromushiya.com/

  

ぱらぱらとめくっただけで,マニアックな湿地性生物がこれでもかと登場しており,これまた「くろむし屋」の雰囲気が漂う。何より仕事量が凄まじい。手に取っただけで迫力の伝わる力作であるのがわかる。読むのが非常に楽しみである。

  

これはアタリの匂いがする。読む前に言っても説得力がないとは思うが,生き物が好きな方なら一冊手元に置いておいて損はないと思う。是非,ご一考されたし。

  

中島さん,どうもありがとうございました。大切に読ませていただきます。

 

中島淳のページ
http://kuromushiya.com/koushiki/top.html

 

見聞読考録 2019/03/29

一時帰国

学会やら何やらのため,帰国している。今日はこれから,静岡に発つ。

15:00 から一般向けの講演を行う予定。

  

日付|03月24日15:00- 一般向け講演

題名|或るカタツムリ研究者の冒険奇譚

場所|静岡県立ふじのくに地球環境史ミュージアム

 

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お時間の或る方はお越しください。

  

見聞読考録 2019/03/24

友人のブログ

友人が書くブログ「ECOSTATS」が面白い。有名な学術雑誌に自身の論文を載せ,学会の大賞を受賞し,若くして才能を開花させている努力の人。自慢の友人である。

  

多少小難しいところもあるが,少なくとも科学界隈の住人には面白く読んでもらえるだろう。久々に開いてみたら,良い記事が増えていたので,覚え書きとともにご紹介。

  

とにかくいろいろとすごい。そしていろいろとおめでとう。見習うところの多い友人である。

  

見聞読考録 2019/03/23

33 歳,じゃなかった。

今月 13 日で 33 歳になったのだと思っていたのに,実際は 32 歳になったばかりだと気づいて心底驚いた私です。なんだか得した気分です。皆さま,お祝いのコメントをありがとうございました。


今後とも末永くどうぞよろしくお願いします。3 月に神戸にいらっしゃる方,ぜひお会いしましょう!飲みましょう!

 

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写真:NZ の原生林にて,調査風景。

 

見聞読考録 2019/02/18

ボディボードに関する考察

日本から来てくれた友人と,NZ 北島のコロマンデル半島に行ってきた。NZ 最大の都市・オークランドから東に直線距離にして 100 km,陸路で 200 km,車で 3 時間ほどの距離にある山がちな半島である。オークランドっ子がバカンスにと集まる,温暖な土地だ。

 

Cathedral Cove や Hot Water Beach などの有名どころは,さすがに人が多かった。Hot Water Beach では,砂浜を掘ると温水が湧き出すということになっているのだが,ホットスポットにはものすごい数の人が密集しており,一瞬にしてやる気が失せ,すぐに海に泳ぎに行った。観光業は,人が集まらないと成り立たない。しかし人が集まると,往々にして観光地の質が下がる。ジレンマと言えよう。その点,Cathedoral Cove は車では行けないようにしてあり,環境が破壊されるのを上手に防いでいるようだ。さすがは観光と保全の分野で世界の最先端を行く先進国 NZ。とはいえ本当に良いところは,そっとしておきたいものだと思う休暇であった。

 

さて,コロマンデル半島で過ごした三日間は,総じてよく晴れていた。南半球特有の強烈な日差しが肌に痛い。そして,風が強かった。おかげで,波が高かった。それはもう,とんでもなく高かった。掲示板に表示された波高の欄には「> ? m」とある。とにかく恐ろしく高いということだけはわかった。ライフセーバーの方々が,それはもう厳しい表情で荒れ狂う波を睨み,そんなことはおかまいなく,レジャーを楽しむ人々は遠浅の海に飛び込んで行った。

 

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友人がサーファーだということで,私もボディボードなるものに挑戦した。水面下を流れる寄せ波と引き波の波長はあまりに長く,強烈な引き波に耐える時間はいつまでも終わらないかのような錯覚さえ覚えた。そしてその上をさらに波が打ち寄せるという二重の構造になっているようだった。寄せ波の上を波が渡るときには,波はただ順番に一列になって寄せるだけだが,引き波の上を寄せるときには,後続の波が前の波を捉え,ひときわ大きな波に変わることがある。その波が狙い目だ。特に足元を流れる引き波が寄せ波に変わる頃,表面に見える波がいくつも重なり,波を追いかけ泳ぐ身体を後押ししてくれる。あとは浜辺まで身を預けるだけでいい。そんなことを幼少の頃によく,浮き輪を使って波に乗りながら考えていたのを久方ぶりに思い出した。ああ懐かしき九十九里浜。ああ思い出の勿来海岸。私は太平洋で育ったのだなぁ。

 

誰かに連れられなければきっとやることはないであろうオシャレなレジャーに誘ってくれた友人に心からの感謝を。波に乗り波を追い越して水面を疾走する感覚はやはり楽しいものであった。いやぁ楽しかった。

 

見聞読考録 2019/02/18

NZ の植物を調べるには

NZ 南島・最南端の街,インバカーギルに来ている。明日からまた調査が始まる。
今回の調査では樹冠を占める樹木の種類も記録しているのだが,北島との樹種のあまりの違いに戸惑いを隠せない。葉っぱを採ってきては,ひぃひぃ言いながら調べている。


そんな中,見つけたのが,下記のサイト。
分布域も調べられるので,とっても便利。


New Zealand Plant Conservation Network
http://www.nzpcn.org.nz/default.aspx


しばらくお世話になるであろうこのサイトをすぐに見つけられるように。
メモメモ。


見聞読考録 2019/01/21

【2018年】研究コラム閲覧数ランキング Top 10

academist Journal というウェブマガジンに昨年 2018 年に掲載された研究コラムの中から,閲覧数が多かった記事の Top 10 が公開され,私たち「外来ナメクジに挑む市民と学者の会」の成果のひとつである外来ナメクジの市民科学の記事が1位に輝いた。たいへん喜ばしく,ありがたい。


【2018年】研究コラム閲覧数ランキング Top 10 - academist Journal


皆さんいつも,ありがとうございます。今年も楽しくやりましょう。


見聞読考録 2019/01/02

Happy New Year 2019!!

NZ は Palmerston North の中心地 "Square" にて,カウントダウンのイベントに参加してきた。プロ歌手らの生演奏を聞きながら年明けを待ち,10 カウントののちに花火と共に新年を迎えるという海外のものとしては非常にオーソドックスなやつだ。思い返せばこれほどベタな年明けを過ごしたのは初めてかもしれない。


日本よりも4時間も早い,世界的にも相当早い年明けとなった。皆さん,2019 年もどうぞよろしくお願いいたします。


見聞読考録 2019/01/01

天敵が生き物の多様化を促すのか?

久々に academist Journal を覗いてみたら,二年前に投稿した殻振りカタツムリの記事がランキングの1位に返り咲いていた。これはいったいどうしたことか。



実はこれと同じ内容の文章執筆を頼まれているのだが,academist Journal に寄稿した記事は自分で言うのもなんだがそこそこ良く書けているように見える。似たような内容の文章を新たに書くとしたらどういう工夫を加えたら良いだろう,ううむ,悩ましい。方針が固まらない。おかげで執筆は遅々として進まない。これはいったいどうしたことか。


ううむ...。
ううむ...。


見聞読考録 2018/12/30