見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

モデルナワクチン体験記

先週 9 月 25 日に,COVID19 に対する2回目のワクチン接種を終えた。京都大学の関係者はモデルナ製の指定であった。結論から言えば,大きな副反応もなくすんなりクリアできた。学生さんたちは皆,とても苦しそうだったので,拍子抜けという感じもする。

 

京大病院での接種後,15分間の待機期間に真後ろに座っていた女性の方が椅子から落ちたのには驚いた。慌ててスタッフを呼ぶ。意識はあり,頭が痛いと言っていた。恐らく血管迷走神経反射だと思うが,極度の緊張や不安によって引き起こされる脳貧血で,新型コロナウィルスのワクチンに限らずワクチン接種の際には比較的よくある話だそうだ。場合によっては注射針が刺さる前に失神してしまう方もいるらしい。

 

その日の夜は,何事もなく過ぎた。強いて言えば,通称・モデルナアームとか言われる接種部位の腫れが出たくらいで,それも1回目より遥かに軽く,どうってことないくらい。それよりも双子育児が相変わらず大変で,1~2 時間ごとに泣き喚く双子の世話を夜中し続けた。双子のどちらか一方だけでも泣き声がすごいので,聞いているだけで頭が割れそうになる。それでも一度に一人しか相手できないので,二人同時に泣き始めた時には,鼓膜がビリビリするような爆音を BGM に聞きながら,もう一方を世話していくことになる。ワクチン接種などなんのその,安静って何それ美味しいの?状態の夜は,なんかもういっそ楽しかった。

 

二日目に入り,著名な某教授さんの退官記念講演をオンラインで聞きながら,悪寒が走る感じがした。体温は 37.0~37.5 度をウロウロしている。おお,来たな,と言う感じ。腕の腫れも増した。

 

二日目の夜,体温がついに 38.1 度をマーク。足元がフラフラする。まだまだ上がりそうな気配にいっそワクワクした。ヘロヘロになりながら双子の世話をする私に,妻が「解熱剤を飲みなさい」と一言。どこまでいくのかちょっと興味があったが,双子育児に支障が出始めていたので,飲んでしまった。ロキソプロフェンナトリウム錠,60 mg。

 

そうしたら,スッと熱が引いて,それはもう引くくらい引いて,腕の痛みを除けばすっかり元気になってしまった。普段,薬を飲まないせいか,効き方が半端じゃなかった。それっきり,副反応が終了した。熱が酷い,頭が痛い,関節が,倦怠感がと周りに脅されて,かなり覚悟して臨んだので,これでいいの?と思ったのは正直なところ。

 

何事もなかったように元気になった私は,その夜も双子育児に精を出しましたとさ。

 

おしまい。

 

 

見聞読考録 2021/10/01

双子の兄妹はぴぎゃあと泣く

けんっ

 

けんっ

 

ぎゃぁぁあああああ

 

ぴぎゃぁぁああああ

 

双子の兄の鳴き声がこだまする。

隣で寝ていた妹ちゃんも目を覚ます。

 

ぎゃぁぁあああああ

ぎゃぁぁあああああ

 

ぴぎゃぁぁああああ

ぴぎゃぁぁああああ

 

ぎぃぃやぁぁぁあああおあぁぁあおあああぁああおあああああ

 

我が家でカオスタイムと呼ばれる混沌の始まりは,泣き声の見事なシンクロで幕を開ける。

いつ始まるのかは双子次第。夜中のこともあるし,明け方のこともある。ほとんどない日もあれば,何回も起こる日もある。

 

21:00~22:30 は訳あって毎日必ず訪れるカオスタイムなのだが,その話はまた別の機会に譲ろう。

 

耳をつんざくような双子の叫び泣きに,同室で寝ている二歳の兄も目を覚ます。

 

うぅぅぅうぇえぇええええええいやぁぁあああぁああああああ

 

ぴぎゃぁぁああああ

ぴぎゃぁぁああああ

うぇぇえぇえあああ

 

エントロピーはいや増すばかりだ。頭が痛い。

 

二歳の兄を放置して,双子を別室に連れ出す。

冷凍保存した母乳を冷水で溶かし,哺乳瓶に移し温水で温める。

 

双子を片腕に抱え,あやす。

片腕での作業は難しく,時には慌てて哺乳瓶を落とし,床にミルクを撒き散らす。

響き渡るガラス瓶の落下音に,腕の中の双子が揃って叫び出す。昨晩,深夜 1 時頃の出来事だ。

 

母乳を人肌ほどに温めたら,一人一人に与える。

二人いっぺんにあげる技をまだ習得していないので(そんな技あるのかな),一人は泣かせたままにするか,運が良ければ泣き疲れて寝てくれるのでその隙にもう一人を処理する。

 

哺乳瓶で母乳を与えるのには10分以上の時間がかかる。一回に与える量は,50~100 mL。妹ちゃんはとても優秀で,60~70 mL ほども飲めばその後 3 時間は寝てくれる。ただし,鳴き声の音量は圧倒的だし,母乳を飲んだ後のシャックリ率の高さは不憫でしかない。

 

兄ちゃんはその点,今のところたいへんで,100 mL 与えても必ず 1 時間から 1時間半おきに目を覚まして泣き出してしまう。毎回母乳を要求する訳でもなく,謎だ。謎の存在だ。

 

母乳を与えている途中で,咽せて咳き込んだり,空気を飲み込みすぎて吐いたりする。その都度,身体を起こして背中をトントンと叩いてあげる。ゲップをさせる。そうすると,母乳を十分に飲まないまますやすやと寝てしまうことがあるので,その隙にオムツを換える。うんちをしたままにしておくとお尻が被れるので,とても大切な作業である。

 

うんちを換えると大概,泣く。はいはい,うんうん,と流して,粛々と作業を終える。そして,再び母乳を与える。

 

母乳を与えると,やっぱり咳き込む。ケッホケホッ,ケホッ。ぴぎゃぁぁ。その都度,身体を起こして背中をトントンと叩いてあげる。落ち着いたらまた母乳を与える。

 

再度,母乳を与えているとブッフォォッとかプリプリプリという音を出しながら,うんちをすることが多々ある。うわっと思うけれども,めんどくさっと思うけれども,母乳を与え終わるのを待って,換える。

 

うんちを換えると大概,泣く。もうどうしようもないので,泣くがままにして,粛々と作業を終える。

 

母乳はもういらないっ!って顔になったらようやくクーファン(ゆらゆら揺れるベッドみたいなやつ)に横にする。置き方が雑とかで気に入らないと寝てくれないので,泣き出したらまた抱っこしてあやす。なかなかに神経を使う。

 

それをもう一人繰り返し,次第に秩序を回復していくのである。これを毎日 3 時間おきに繰り返す。両親はいつ寝れば良いのかと絶望する。

 

双子が生まれて早一ヶ月。NICU から退院してきてたったの一週間。毎日が激しすぎて戦慄している。これはヤバい。一週間の出来事とは思えない。双子を見事に育て上げた世の親御さんたちはいったいどうやってこの苦難を乗り越えたのだろうか。心の中で師と崇めたい。

 

戦いの日々は続く。

 

 

見聞読考録,2021/09/21

英辞郎 on the WEB

英語の文章を読んだり書いたりするとき,「英辞郎 on the WEB」というサイトを利用することがある。

 

例えば私が良く使う,malacophagous という単語。貝食性という意味だが,貝類かその捕食者の研究でもしていない限り,滅多に使われることのない言葉なので Microsoft Word では誤字として扱われ,赤い波線が引かれてしまう。

 

うっせぇわ,と無視しているのだが,なんだか急に不安になって,何年かぶりに「英辞郎 on the WEB」で検索してみた。そして,ぶったまげた。

 

例文がひとつだけヒットしたのだが,その例文が私の書いた論文の一文だったのだ。試しに,land snail で検索してみると,同じ論文からの引用がいくつも出てきた。

 

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land snail なんて,割とメジャーな単語なのに,どういうことだろう。誰が選んだのだろう。嬉しい話だが,驚きと戸惑いが大きい。

 

英文の見本として,大丈夫だろうか...。

 

 

見聞読考録 2021/08/09

東北調査より帰還

野外調査のため,東北地方に行っていた。好天に恵まれまくった有難い旅程であった。帰学後,真っ黒に日焼けした姿を晒して,夏休みの小学生みたいと笑われること多数。この年にもなって小学生かと笑われるのも考えものだが,それも有難いと感謝するべきだろう。

 

合計 18 日間に及ぶ旅路であった。まずは,所在地の京都からレンタカーで東北へ向かう。Google Maps を用いて算出すると,最初の調査地までおよそ 12 時間の運転,最後の調査地からおよそ 10 時間の運転と出る。10 時間だとか 12 時間だとかそんな長時間の連続した運転に耐える人間はいないだろう(いるのかな)。結局,SA で仮眠を取りながら二日間かけて休み休み向かい,同様に二日間かけて休み休み帰ってくることとなった。今回の旅では運転が一番しんどかった。

 

かといって,調査内容が簡単だったかといえばそんなこともなく,実に 13 日間を山に登って過ごした。15 kg ほどのザックを背負って 3 泊 4 日の縦走をこなした岩手山周辺での調査は,中でも今回のハイライトと言えるだろうか。栗駒山に登り,早池峰山に登り,安家森に登り,岩手山に登り,八幡平に登り,森吉山に登り,八甲田山に登り,和賀岳に登り,笙ヶ岳に登り,月山に登り,蔵王に登り,登りに登った幸せな旅路であった。累積標高は 1 万メートルにもなった。

 

最後は東北を直撃した台風 8 号から逃れるように,すり抜けるようにして帰還した。目的のモノも採れたし,とにかく大満足の調査旅行であった。

 

4 月 2 日から,西表・沖縄,九州,北陸,関東,北海道,そして今回の東北と続いた怒涛の今年度の調査日程もついにこれで終わり。さぁ,荒れ果てた机周りに文字通り山積するデスクワークに手をつけるときがきた。4 月から集めに集めたサンプルが山と積まれている。不在の間に置かれた郵便物や事務関連の仕事がまるでタワーのようだ。不在の間に納品された新品の機材や電子機器も幅を取る。間に広告やらセミナーの案内やらが挟まれているのは本当にやめてほしい,頼むからゴミを配らないでほしい。眺めているだけでやる気が削がれる,とんでもないデスク環境である。しかし,ついに手をつけるときがきた。

 

見聞読考録 2021/08/01

『どこかでベートーベン』

調査のため長期出張。

調査のため長期出張。

調査のため長期主張。

調査のための長期出張。

長査のためn長s気主っc張。

ちょすあのあえmっちゅうk主c雨。

 

そんな日々を過ごしている。

野外調査は楽しい。野外にいる時間が好きだ。

 

研究が好きだ。

旅行が好きだ。

冒険が好きだ。

 

生き物と触れ合う瞬間が好きだ。

生き物を求めて彷徨う時間が好きだ。

 

だが,それにしても,今年のペースは異常である。

 

いや,博士課程の頃まではこれくらいのペースで旅に出ることは当たり前だったので異常というほどではない。でも,久々なのだ,たぶん。

 

いやいや,博士を取ってからもずっと国内に海外に出ずっぱりだった。ということは,久々でもないのか。ここ2年ほどが穏やかだった,と言い換えた方が良いか。

 

ほんのわずかな平穏を経ただけで,異常な頻度のような気がしているということか。しかも昨今のコロナ禍もあり,全て国内旅行である。楽勝,と思っていたのだ。4月までは。

 

だが,ラボにいるよりも野外にいる方が多くなると,デスクワークが疎かになる。

 

書き仕事が溜まる。

当然,サンプルも溜まる。

 

最低限のノルマをこなして,宿題を放置したまま,次の旅に出る。

上乗せされるように書き仕事が溜まる。サンプルが溜まる。アホほど溜まる。

 

打ち込まなければならないデータが溜まる。

管理しなければならない GPS ログが溜まる。

先の出張報告が,次の出張計画が,レシートが,事務処理が,溜まりに溜まる。

 

楽しかったはずの調査が辛いだけのものとなるわけではなく,相変わらず楽しくて仕方がないのだが,久々の調査にあるあの待ち遠しさ,眠れぬほどの興奮は薄れてしまう。処理が追いついていない山積みの仕事から思わず目を背けたくなる。

 

そして,現実逃避に走ることになる。

今回辿り着いたのは,小説家・中山七里さんの『いつまでもショパン』であった。セコマ(北海道のご当地コンビニ,セイコーマート)の本棚に見つけ,タイトルに惹かれて手に取った。手に取ってしまった。

 

そして,絡め取られた。

手に取ったが最後,圧倒的な筆力で,ページ繰る手が止まらない。ミステリーの面白さも去ることながら,演奏シーンの疾走感が凄まじい。音楽好きにはたまらない著作であった。

 

そして,調査にも実験にも支障が出始めている。

北海道の山中での調査では,誘惑を振り切れずにザックに忍ばせてしまったため,山頂で小一時間も物語の世界にのめり込むハメになった。炎天下の中,想定外の長居に腕は焼け,しばらくはヒリヒリと痛んだ。

調査から帰るなり中山七里さんの音楽シリーズ5作をまとめ買いし,1作目の『さよならドビュッシー』から2作目『おやすみラフマニノフ』,最初に手に取り調査中に読み終えてしまった3作目『いつまでもショパン』,4作目『どこかでベートーベン』までを一気に読み終えてしまった。

どれもこれも本当に面白い。読み始めたが最後,止めようと思ってもなかなか止められない。研究に支障が出始めているどころの騒ぎではなかった。出まくっていた。

 

そして,一昨日の熱海での土石流である。

4作目『どこかでベートーベン』では,崖崩れと土石流が物語の根幹に関わっていた。偶然ではあるが,物語が現実となったような事件に衝撃を受けた。現実に起こった災厄も凄まじかったが,小説に書かれた災害の描写の正確さにも二度驚いた。

今回の土石流については,人災としての一面もあると聞く。犠牲となった方々に哀悼を。怪我をされた方々,避難を強いられている方々にもお見舞い申し上げる。そして,逸早く事態が収束し,正しく原因が究明されることを願う。

 

そして,結局のところ,山中七里さんの小説は面白いというそれだけを,今日は書きたかったのだ。ミステリー小説としても良いが,それよりも音楽関連の物語として,僕は好きである。例え実生活に支障が出ているとしても,後悔はない。それくらい良い小説であった。

 

遅れはこれから取り戻す。今日,これから。

 

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これまでに読んだ中山七里さんの本。
・さよならドビュッシー
・おやすみラフマニノフ
・いつまでもショパン
・どこかでベートーベン

 

 

見聞読考録 2021/07/05

ワクチン for 新型コロナウィルス

京都大学の関係者は,まず7月中に1回目のワクチン接種を行うことができるらしい。遅い。こんな状態でオリンピックをやろうと言うのだから,国政が国民の命をどれほど軽んじているかが分かろうと言うものだ。

 

が,国内では早い方だろう。有り難く恩恵に預かりたい。

 

が,なんと7月中の2日間に,日程が固定されていた。両日とも調査のため出張の予定であった。はい,アウト。

 

次は8月だろうか。早く受けてしまいたいのだが。。

 

 

見聞読考録 2021/06/29