見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

評記

伊藤穰一博士の WIRED 寄稿文

アルゴリズムがつくる「公正さ」には、差別を助長する危険性が潜んでいる - WIRED, 2019/05/18 https://wired.jp/2019/05/18/ideas-joi-ito-insurance-algorithms/ 非常にまっとう,かつ重要なことが書かれていた。 伊藤穰一博士という方をよく知らないが,…

『垂直の記憶』『ソロ』『凍(とう)』

『垂直の記憶』 山野井泰史・著 『ソロ―単独登攀者・山野井泰史』 丸山直樹・著 『凍(とう)』 沢木耕太郎・著 訳あって山岳関連の書籍に目を通している。 大した訳でもないので,趣味で,と言った方が適切かもしれない。 世界の最高峰,登山の歴史を紐解い…

『電気じかけのクジラは歌う』

電気じかけのクジラは歌う 逸木裕・著 講談社文庫 同僚と呼ばせていただいてで良いだろうか。同じ職場に勤める同期に,音楽の進化を研究している研究者がいる。 私が前々から妄想し機会があれば取り組みたいと思っていた研究テーマのひとつに,私なんかより…

『どこかでベートーベン』

調査のため長期出張。 調査のため長期出張。 調査のため長期主張。 調査のための長期出張。 長査のためn長s気主っc張。 ちょすあのあえmっちゅうk主c雨。 そんな日々を過ごしている。 野外調査は楽しい。野外にいる時間が好きだ。 研究が好きだ。 旅行が好き…

『うさぎをつくろう』

生まれ落ちて 1 年と 3 ヶ月ほど,日数にして 450 日程度の息子がいるので,次から次へと絵本を買い込んでいる。息子はとても絵本が好きなようで,生後 4~5 ヶ月頃には絵本を読む声にじっと耳を傾けていたし,10 ヶ月頃には自分で丁寧にページをめくっていた…

なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか?

研究室の後輩に面白いものを教えてもらった。松尾豊博士の書かれた "論文" である。論文の体裁を取っているが,出版されたものだろうか。それとも,フェイクだろうか。しかし,内容は確かに斬新で面白く,普遍的かつ有意義である。素晴らしい研究であると絶…

あなたの知らない○○ワールド

あなたの知らない○○ワールド第7回 ウオノエの世界 ~カワイイ顔して,魚に寄生する甲殻類https://buna.info/runningstory/2861/?fbclid=IwAR0jjCumL1162JZBIHTkFy-VqgWCI4z6HBNafnGgJxmeAorupxa94KjTwzg 友人,って言って良いのかな。知り合い,って言った…

コロナ禍の景色 - 雲ノ平山荘

kumonodaira.com 特集:登山自粛論 - 雲ノ平山荘 理知的で,示唆に富んだ文章に,思わず唸ってしまった。言葉の運びも美しい。 斜めに読んだので,後でまたじっくり読み直そう。 見聞読考録 - 2020/05/24

数理科学を使えば統計の "主義" を争う必要ない,という主張について検討する

「数理科学を使えば統計の"主義"を争う必要ない」という主張について検討する人はやがて死ぬ - 2020/04/11 面白い。彼もいよいよ大物になってきたなぁ。 見聞読考録 2020/05/08

川那部浩哉博士のインタビュー

面白い記事を読んだ。 前川光司・渡辺勝敏(2020)インタビュー「先達に聞く」:川那部浩哉.魚類学雑誌 67: 138–156 歴代の大先生がたくさん登場し,戦後日本の生態学がいかに形成されてきたかを垣間見れる。同時に,日本の生態学の未来に思いを馳せた。 私…

京都大学山極総長の祝辞

COVID-19 のパンデミックを鑑み,京都大学でもおよそすべての集会が中止されている。特に卒業式や学位授与式,そしておそらくは来る入学式の中止は,当事者にとってさぞかし辛かろう。これを受けて,京都大学総長・山極壽一博士による祝辞が,ウェブ上に公開…

『湿地帯中毒 - 身近な魚の自然史研究』

前回の日本生態学会でお会いした際に,著者である中島淳博士にいただいたご高著『湿地帯中毒』をつい先日読み終えた。 湿地帯中毒 - 身近な魚の自然史研究 中島 淳(著) 東海大学出版部 第1・2章をカマツカの研究,第3章をドジョウの研究に当て,最終第…

WTF

久々に風邪を引いたので,家でのんびり。"Silver Lining" というアメリカ映画を観た。しばらく感傷に浸れる素敵な映画だった。演技もすごいし,テンポも良い。良い映画だ。 しかしアメリカ映画は実に頻繁に "F**k!" と言い放っている。事あるごとに "F**kin …

NZ の CM はどうしてこうも格好良いのか問題

今日ご紹介するのは,私の住む NZ 北島の Palmerston North という街の PR 動画である。発行元は City Council,すなわち市役所だ。 www.youtube.com どうだろうこのクオリティ! 私は今,こんなに素晴らしいところに住まわせていただいているのかと,図らず…

『歴史はべき乗則で動く』/『異端の数ゼロ』

手元に現物があるうちに,書いておこうと思う。ずーっと昔(四年前くらい?)に読み始めて,最後の方まで読んだのに,読みきる前になぜか放ったらかしになっていた本を二冊読んだ。 歴史は「べき乗則」で動く マーク・ブキャナン(Mark Buchanan・著) ハヤ…

『湿地帯中毒』

中島淳博士の書かれた自伝「湿地帯中毒」をいただいた。前々から読みたい読みたいと思っていた本だったので,嬉しい限りである。しかもサイン入りでいただけるとは思いもよらなかった。僕は購入するつもりで声をかけたのに,ささっと送っていただけるとは,…

『薫風のトゥーレ』

薫風のトゥーレ 林健太郎(著) 私の友人(友人と呼ぶには恐れ多い大先輩だが),林健太郎博士が書かれた小説である。この本については,以前もこのブログで紹介したことがあった。 書籍紹介,というタイトルの友人自慢 - 見聞読考録,2017/09/04 岩と氷に閉…

万引き家族

ここ,パーマストンノースでは毎年,国際映画祭が開催される。名を NZIFF (New Zealand International Film Festival) と言う。NZIFF https://www.nziff.co.nz/2018/auckland/ NZ は映画産業の盛んな国でもあるらしい。たいへん素晴らしい。 先日そこで,話…

『すごい進化 - 一見すると不合理の謎を解く』

「すごい進化 - 一見すると不合理の謎を解く」 鈴木紀之(著) ご本人にわざわざオランダまで送っていただいた(!)ノリさんこと鈴木紀之博士の一冊。 先日,ポーランドに向かう飛行機の中で読み終えました。 書評は後日,また改めて書くとして。ひと言。 …

書籍紹介,というタイトルの友人自慢

周りの人たちが続々と本を出版している。 いよいよ凄まじい冊数になってきた。 ナニゴトかっ! であえ!であえーっ! ちなみに僕はまだ一冊も読んでいない。 遥か遠方のオランダの地より,指を咥えてヨダレを垂らしているだけである。 唯一,鈴木紀之博士は…

THE LAB

科学研究における不正を防ぐためのプログラムを受けた。 研究活動に関する不正防止研修(2017 改訂版・日本語)という DVD を見て,内容を理解し,テストに回答するというものだった。海外に出張中の身の上なので,DVD という処置が取られたのかもしれない。…

『働かないアリに意義がある』

北大農学部の進化生物学者,長谷川英祐博士による話題作。部屋が向かいで,飲み仲間でもあるということで,せっかくなので購入して読んでみた。 「働かないアリに意義がある」 長谷川英祐(著) 端的に言って,素晴らしかった。まぁベストセラーになるほどの…

『震える牛』

震える牛 相場英雄(著) ここに書かれていることは過去に実際に起きた痛ましい事件の暗示かもしれない。 あるいはこれから起こる暗い未来の予言かもしれない。 そう思えるほどに、現代社会の闇を生々しく描写している。 “幾度となく、経済的な事由が、国民…

『旭山動物園のつくり方』

旭山動物園のつくり方 原子禅(著) 旭山動物園の華々しい成功とその裏に秘められた努力と苦悩の物語。そのへんに置いてあったので読んでみた。どうすれば人が動くか、どうすれば世界を変えられるか、そのヒントが秘められているように思う。 2012年度の年間…

『アリの巣をめぐる冒険』

アリの巣をめぐる冒険ー未踏の調査地は足下に 丸山宗利(著) 見聞読考録 2013/04/25

『孤独なバッタが群れるとき』

孤独なバッタが群れるときーサバクトビバッタの相変異と大発生 前野ウルド浩太郎(著) 見聞読考録 2013/04/25

『兵隊を持ったアブラムシ』

兵隊を持ったアブラムシ 青木重幸(著) "社会生物学 Sociobiology" という学問がある。その名の通り、生物の社会行動の機能や進化的なメカニズムを扱う。親が子を守るのはなぜか、群れはどのようにしてできるのか。そういう問題を扱う分野である。 その中で…

マクロレンズな日曜日

ついにミラーレス一眼を買ってしまった。 選んだのは、Panasonic LUMIX DMC-GH2。 最近、後継機 GH3 が出たこともあって、だいぶ安くなっていた。高かったけれども、お得感たっぷりなお買い物。 2011年の中国での調査の前日に購入した愛機、RICOH の GX200 …

『ミレニアム1』

ミレニアム1 ドラゴンタトゥーの女 スティーグ・ラーソン(著) 見聞読考録 2012/10/24

『右利きのヘビ仮説』

右利きのヘビ仮説ー追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 細将貴(著) 著者の細将貴さんは以前、僕と同じ研究室に所属していた。その先輩が単著の本を出版したのは、今年の2月のこと。 本を手に取ったのは3月の中頃のことだったか。読み切るまでに…