見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

ボディボードに関する考察

日本から来てくれた友人と,NZ 北島のコロマンデル半島に行ってきた。NZ 最大の都市・オークランドから東に直線距離にして 100 km,陸路で 200 km,車で 3 時間ほどの距離にある山がちな半島である。オークランドっ子がバカンスにと集まる,温暖な土地だ。

 

Cathedral Cove や Hot Water Beach などの有名どころは,さすがに人が多かった。Hot Water Beach では,砂浜を掘ると温水が湧き出すということになっているのだが,ホットスポットにはものすごい数の人が密集しており,一瞬にしてやる気が失せ,すぐに海に泳ぎに行った。観光業は,人が集まらないと成り立たない。しかし人が集まると,往々にして観光地の質が下がる。ジレンマと言えよう。その点,Cathedoral Cove は車では行けないようにしてあり,環境が破壊されるのを上手に防いでいるようだ。さすがは観光と保全の分野で世界の最先端を行く先進国 NZ。とはいえ本当に良いところは,そっとしておきたいものだと思う休暇であった。

 

さて,コロマンデル半島で過ごした三日間は,総じてよく晴れていた。南半球特有の強烈な日差しが肌に痛い。そして,風が強かった。おかげで,波が高かった。それはもう,とんでもなく高かった。掲示板に表示された波高の欄には「> ? m」とある。とにかく恐ろしく高いということだけはわかった。ライフセーバーの方々が,それはもう厳しい表情で荒れ狂う波を睨み,そんなことはおかまいなく,レジャーを楽しむ人々は遠浅の海に飛び込んで行った。

 

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友人がサーファーだということで,私もボディボードなるものに挑戦した。水面下を流れる寄せ波と引き波の波長はあまりに長く,強烈な引き波に耐える時間はいつまでも終わらないかのような錯覚さえ覚えた。そしてその上をさらに波が打ち寄せるという二重の構造になっているようだった。寄せ波の上を波が渡るときには,波はただ順番に一列になって寄せるだけだが,引き波の上を寄せるときには,後続の波が前の波を捉え,ひときわ大きな波に変わることがある。その波が狙い目だ。特に足元を流れる引き波が寄せ波に変わる頃,表面に見える波がいくつも重なり,波を追いかけ泳ぐ身体を後押ししてくれる。あとは浜辺まで身を預けるだけでいい。そんなことを幼少の頃によく,浮き輪を使って波に乗りながら考えていたのを久方ぶりに思い出した。ああ懐かしき九十九里浜。ああ思い出の勿来海岸。私は太平洋で育ったのだなぁ。

 

誰かに連れられなければきっとやることはないであろうオシャレなレジャーに誘ってくれた友人に心からの感謝を。波に乗り波を追い越して水面を疾走する感覚はやはり楽しいものであった。いやぁ楽しかった。

 

見聞読考録 2019/02/18