見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

芝刈り

NZ で借りている家は,幸運なことに,とても大きい。庭も広い。


大きいことは良いことだ。


春が過ぎ,夏の気配が色濃くなり,庭の芝も伸びてきた。


ああ,芝の中にキク科の白い花が咲き乱れている。黄色い花も,あれはウマノアシガタに似ている。塀に沿って伸びてきたキク科の花はコウゾリナに見える。皆,それぞれに美しい。


あれほど美しい花々を「雑草」と呼ぶなんて,人間の身勝手だよなぁ。
ボサボサに生えてきた芝も青々としてキレイだよなぁ。
もっともっと伸びれば,きっと昆虫や鳥たちもたくさん来てくれるんじゃないかなぁ。


ほら早速,薪の入った小屋には,クロウタドリも巣を作ってくれている。
NZ のツバメ、Welcome Swallow も下見に来ているようだ。


近所のネコ達も,たくさん遊びに来るようになってきた。
おいこら,どこの子か知らないが,ちょっとばかし可愛いからって家の中に勝手に入ってくるんじゃない。
...おー,よしよし...。まったく可愛いな,NZ の鳥を食い散らかしているくせに...。


ほら,大きいことは良いことだ。
このまま家が,森になれば良い。


そう思って楽しんでいたのだが,不動産会社から連絡が来てしまった。
「庭の雑草を刈りなさい!」


NZ ではどうやら,家を借り受けている人々の義務であるそうだ。
ああそれで,表の通りに面した歩道の芝生が,ウチの前だけ伸びていたのか。
どうしてかなぁと,不思議に思っていたのだ。


そういうわけで今日,芝刈り機を購入した。知り合いから,たった 50 NZD で。
早速やってみたが,案外たいへんだ。楽しくもあるが,あまりに広いと手に負えないかもしれない。


大きいのも良いけど,やっぱりほどほどが良いよね。うん。


見分読考録 2018/10/28

ニュージーランドの最果てを巡る旅

旅に出ている。私の人生はいつでも旅に出ているようなものだが,今回は文字通り旅に出ている。二週間ほどの旅路だったはずなのだが,気づけばもう残すことろ4日ほどになってしまった。


行き先は,ニュージーランドの北の果て。NZ 北島の北の街・オークランドよりさらに北の土地,ノースランドである。現存する最大のカウリの巨木である タネ・マフタを拝んだり,クルーズ船に乗って野生のイルカに会いに行ったりと,遊び要素満点の旅である。それでもなお,道すがら採り集めた研究のサンプルが重量以上に重くのしかかる。ただただ観光をするだけの普通の旅などもはやできないのかもしれない。サンプルを採らないと死ぬ病気かなんかかもしれない。


今日はこれから,最果ての地であるケープ・レインガに向かう。パーマストンノースから車で6〜7時間も北上したオークランドから、さらに6時間以上も北に走る果ての果てである。どんな景色が見られるのか,どんな驚きが飛び出すのか,楽しみである。


見分読考録 2018/10/11

春は桜,NZ は美し

北海道はもう紅葉が始まっている頃だろうか。
仙台は,東京は,まだ厳しい残暑に見舞われている頃だろうか。


南半球に位置する,ここ NZ のパーマストンノースは,肌寒い冬を終えいよいよ暖かくなってきた。我が家の庭からも,家のすぐ近くにある立派な公園からも,春の訪れを感じる今日この頃である。


春の訪れを,それはもうバシバシ感じる。感じざるを得ない。
薪が店頭から姿を消し,我が家の暖炉もお役御免となった。
陽気もぽかぽかと暖かくなってきたし,窓枠の隙間風も気にならなくなった。
そして何より,あちらこちらでそれはもう所狭しと花が咲き乱れ,次から次へと訪れる鳥たちがせわしなくさえずり,そこかしこから生き物の気配がするようになってきた。




特に公園に桜並木があるのには驚いた。
こちらでもやはりとても人気があるようで,道行く人々が足を止め,目を細めて写真を撮っている。


いよいよ,フィールドシーズン到来である。
これからますます忙しくなるだろう。


見聞読考録 2018/09/23

札幌の地震

日本の皆さん,ご無事ですか?
台風だけでもとんでもない被害だったというのに,加えて都市直下型の地震だなんて。。


前にも似たようなことを思ったが,日本は本当に災害の多い国である。NZ だって世界的に見れば少ない方ではないはずだが,それでも日本と比べれば全く穏やかに見える。


帰国/外から眺めた日本列島 - 見聞読考録,2014/10/12
http://d.hatena.ne.jp/kenbun/20141012/1413104334


とにかく今は,皆さんの無事と被災地の逸早い復興を祈ります。


見聞読考録 2018/09/06

『薫風のトゥーレ』

薫風のトゥーレ
林健太郎(著)


私の友人(友人と呼ぶには恐れ多い大先輩だが),林健太郎博士が書かれた小説である。この本については,以前もこのブログで紹介したことがあった。


書籍紹介,というタイトルの友人自慢 - 見聞読考録,2017/09/04


岩と氷に閉ざされた過酷な自然に息づく,ホッキョクギツネの "ソル" と彼を取り巻く生き物たちの物語である。よく知らぬまま「絵本」などと書いたが,違った。253 頁もある長編小説であった。ファンタジーの色合いが濃いが,作中ではノルウェースバールバル諸島の自然環境を忠実に採用しており,むしろ生き物好きのリアリストにこそオススメしたい一冊である。


我々ヒトを含む生き物同士の関わりも現実に沿って描かれているし,さすがは現役の生態学者の書いた小説だけあって合間に紹介されるスバールバル諸島のうんちくも面白く,とても勉強になる。かといって物語として退屈することもなく,ホッキョクギツネのくせに狩りをしないことを選んだ変わり者の "ソル" を中心に,まるでドキュメンタリー映像のように楽しむことができる。


読み終えてからすっかり時間が経ってしまい,物語の詳細については記憶も曖昧なので,Amazon に書いた書評以上のことは何も書けない。本自体も残念ながら日本に置いてきてしまった。それでも作中に描かれた北極域の情景だけは,今でもありありと思い出す。美しい映像を後に残す,爽やかな作品である。


小中学校の指定図書となるべき作品なのではなかろうか。北極の自然を垣間見たいそこのお方,一冊どうだろうか。生き物好きのお子さんを持て余すそこのお方,一冊どうだろうか。


健太郎さんは私の友人だが,この書評自体は中立に書いたつもりだ。ただし健太郎さんは私の友人なので,このブログのエントリー自体は全く中立ではない。ねぇねぇ買いなよ。とにかく買いなよ。良い本だからさ。


見聞読考録 2018/08/31

ショートショート!

作家・星新一の作品のことではない,電化製品のショートである。
ボカン!と派手な音を立てて,愛用の電動工具がひとつ,弾け飛んだ。


電圧の違いをすっかり忘れていた。とても大事にしていたのに,わざわざ日本から持ち込んだほどだというのに,スイッチオン!と同時にドでかい火花を散らして逝ってしまわれた。


悲しいので,もう寝る。


見聞読考録 2018/08/30

万引き家族

ここ,パーマストンノースでは毎年,国際映画祭が開催される。名を NZIFF (New Zealand International Film Festival) と言う。

NZIFF
https://www.nziff.co.nz/2018/auckland/


NZ は映画産業の盛んな国でもあるらしい。たいへん素晴らしい。


先日そこで,話題の「万引き家族」を観てきた。観終わったあとも長く長く尾を引く,美しくも悲しい,深い深い作品であった。ごく一部ではあるが,日本の闇とも言える問題を的確に捉えていた。チャンスがあれば,是非観てほしい。


年配の方々ばかりが目立って,劇場に足を運んでいた。そもそも映画祭自体が年配の方々に人気のお祭りなのか,それとも「万引き家族」の映画が年配の方々にウケているのかは,定かではない。去り際に,腰の曲がった老婆が,「Japanese films do not dessapoint me(日本の映画は期待を裏切らない)」と,嬉しい言葉を残していった。


...そんなことはないと思うが。


見聞読考録 2018/08/29

人気記事ランキング1位2位独占

2018年8月29日 09:41現在(NZ 時間),私の寄稿した2つの記事が academist Journal 人気記事ランキングの1位と2位を占めている。昔のカタツムリの記事まで取り上げられようとは,ありがたい。

ナメクジの出現を予測する!
https://academist-cf.com/journal/?p=7702


天敵が生き物の多様化を促す?
https://academist-cf.com/journal/?p=2898


さて次のネタも早めにしたためないと。


見聞読考録 2018/08/29

Reserve and Sanctuary

私の住む Palmy (Palmerston North) から北に二時間ほど車で走ったところにある,Bushy Park Sanctuary に行ってきた。3泊4日の調査旅行である。およそ 100 ha の小さな森だが,平地では珍しく NZ 本来の自然が残された,巨木の林立する素晴らしい森だった。人の手がほとんど入っていない,NZ らしい森をようやく拝むことができた。


Bushy Park Sanctuary
http://www.bushyparksanctuary.org.nz


さて,どんな生き物がいたのか。という話は後日に回すとして...,とりあえず今日,受入研究者に教えてもらったその他の調査地候補をここにメモっておく。


Sanctuary Mountain Maungatautari
https://www.sanctuarymountain.co.nz/home


Mohi Bush Scenic Reserve
https://www.doc.govt.nz/parks-and-recreation/places-to-go/hawkes-bay/places/elsthorpe-and-mohi-bush-scenic-reserves/things-to-do/mohi-bush-scenic-reserve-walks/


いよいよこちらでの研究が始まった,という感じだ。楽しみである。
早速,サンプルの処理が溜まってしまっているが。。


見聞読考録 2018/08/21