怒涛の調査の日々もようやく一段落し,久々に落ち着いた日曜日を過ごしている。
古巣の後輩より,嬉しい知らせもあったし。
さて,次を何とかしなければ。
見聞読考録 2019/05/19
パイン材やら Cupressus macroparpa(マクロカルパ)やらの薪を 4 m^3 まとめて 450 NZD で購入した。今月始めのことである。
NZ はすっかり秋めいて,雨降りの日などはすでに肌寒いほどである。ついに暖炉に火を入れるようになり,二度目の冬を間近に感じるようになった。
気づいてみればこちらに来て、もう 9 ヶ月も経ったらしい。早い。あまりに早い。しかしとても充実した 9 ヶ月であった。フィールドシーズンも終わりに近づき,もうそろそろ室内の実験に取り掛かりたいところ。
言った側から,明々後日から一週間以上も調査旅行に出かけるんだけれども。今シーズン最後のまとまった調査になる予定なので,許してほしい。
見聞読考録 2019/04/29
今日は,イースターである。春分の日の後の最初の満月の次の日曜日に行われる祝の日だ。
日本語では,復活祭と言う。イエス・キリストが,十字架に架けられた三日後に復活したことを祝う日として,海外ではクリスマスよりも重要視されているとも聞く。
二年前にベルギーのアントワープ動物園を訪れた時も,ちょうどイースターの時期で,動物園にイースターの飾り付けをしたのか,それともイースターのお祭りに動物を持ち込んだのかわからないくらいに,盛大に祝われていたのを覚えている。
ここニュージーランドでもやはり,重要な祝日であるようで,年末年始すら休まなかったスーパーマーケットも,軒並み店を閉じていた。イースターの前の金曜と後の月曜も,基本的に休みだ。金曜に大学に行ったところ,廊下まで暗くてびっくりしてしまった。
このお祭りが日本に持ち込まれるのはいつになるだろうか。理由も知らずにお祭り騒ぎをするのが好きな人が多いようだから,上手く踊らせれば定着してもおかしくはないと思う。旗手は誰になるだろう。鶏卵業界だろうか,それともバレンタインデーのようにまたチョコレート業界が流行らせるのだろうか。
僕は踊るのは苦手だ。どちらか選ぶとしたら踊らせる側になりたいと,いつも邪に眺めている。
見聞読考録 2019/04/21
手元に現物があるうちに,書いておこうと思う。ずーっと昔(四年前くらい?)に読み始めて,最後の方まで読んだのに,読みきる前になぜか放ったらかしになっていた本を二冊読んだ。
歴史は「べき乗則」で動く
マーク・ブキャナン(Mark Buchanan・著)
ハヤカワ文庫
異端の数ゼロ
チャールズ・サイフェ(著)
ハヤカワ文庫
ハヤカワ文庫の「数理を愉しむシリーズ」読んだのはこれが初めてだが,どちらも素晴らしかった。世界の見方が変わるような本であった。強いて言えば "ゼロ" の方が読みやすいかな。多くの方に,おすすめしたい。
難しい話ではある。それをこれほどまでにわかりやすく,退屈することなく読ませるとは,プロのサイエンスライターの凄さを垣間見るようだ。一線の研究者が書く本ももちろん素晴らしいものが多いが,研究者への負担が大きい。研究者の出す実際の研究成果に対して,世に出回る情報がどうしても限られてしまう。その点,サイエンスライターという職業は,科学の難しい話を一般にわかりやすく語ることを専門としている。一般的に言って科学の面白さを伝えるという点においては,本職の研究者よりも一枚も二枚も上手と言えるだろう。
日本ではまだ見られない職業だと思う。いずれは日本でも本職のサイエンスライターが当たり前となるくらいに,科学が身近に感じられる世の中になると良いと願う。まずは,ここで紹介した二冊をもって皆さんも,科学の深みを,それから我々の生きる世界の深みを,じっくり味わってみてはいかがだろうか。
見聞読考録 2019/03/30
中島淳博士の書かれた自伝「湿地帯中毒」をいただいた。前々から読みたい読みたいと思っていた本だったので,嬉しい限りである。しかもサイン入りでいただけるとは思いもよらなかった。僕は購入するつもりで声をかけたのに,ささっと送っていただけるとは,なんてデキた人なんだろう。かっこいい。ああいう大人に僕もなりたい。結局なんだかおねだりしたみたいになって,ごめんなさい。
先日の生態学会の一般講演会で初めてお会いし,演者として一緒に登壇した。お話も面白く,会場の笑いを爽やかに攫っていく姿が印象的であった。
古くは「くろむし屋」という黒魔術的なウェブサイトを運営されていた「湿地帯の貴公子」こと「おいかわ丸」さんとしても,有名な方である。今回は十分に話す時間がなかったが,物腰の柔らかさと爽やかな笑顔の裏に危険な香りを漂わせ,ちょうど「くろむし屋」のウェブサイトのように,只者ではない雰囲気を醸し出していたように思う。
↑「おいかわ丸のくろむし屋」のウェブサイト
ぱらぱらとめくっただけで,マニアックな湿地性生物がこれでもかと登場しており,これまた「くろむし屋」の雰囲気が漂う。何より仕事量が凄まじい。手に取っただけで迫力の伝わる力作であるのがわかる。読むのが非常に楽しみである。
これはアタリの匂いがする。読む前に言っても説得力がないとは思うが,生き物が好きな方なら一冊手元に置いておいて損はないと思う。是非,ご一考されたし。
中島さん,どうもありがとうございました。大切に読ませていただきます。
中島淳のページ
http://kuromushiya.com/koushiki/top.html
見聞読考録 2019/03/29
今月 13 日で 33 歳になったのだと思っていたのに,実際は 32 歳になったばかりだと気づいて心底驚いた私です。なんだか得した気分です。皆さま,お祝いのコメントをありがとうございました。
今後とも末永くどうぞよろしくお願いします。3 月に神戸にいらっしゃる方,ぜひお会いしましょう!飲みましょう!
写真:NZ の原生林にて,調査風景。
見聞読考録 2019/02/18
日本から来てくれた友人と,NZ 北島のコロマンデル半島に行ってきた。NZ 最大の都市・オークランドから東に直線距離にして 100 km,陸路で 200 km,車で 3 時間ほどの距離にある山がちな半島である。オークランドっ子がバカンスにと集まる,温暖な土地だ。
Cathedral Cove や Hot Water Beach などの有名どころは,さすがに人が多かった。Hot Water Beach では,砂浜を掘ると温水が湧き出すということになっているのだが,ホットスポットにはものすごい数の人が密集しており,一瞬にしてやる気が失せ,すぐに海に泳ぎに行った。観光業は,人が集まらないと成り立たない。しかし人が集まると,往々にして観光地の質が下がる。ジレンマと言えよう。その点,Cathedoral Cove は車では行けないようにしてあり,環境が破壊されるのを上手に防いでいるようだ。さすがは観光と保全の分野で世界の最先端を行く先進国 NZ。とはいえ本当に良いところは,そっとしておきたいものだと思う休暇であった。
さて,コロマンデル半島で過ごした三日間は,総じてよく晴れていた。南半球特有の強烈な日差しが肌に痛い。そして,風が強かった。おかげで,波が高かった。それはもう,とんでもなく高かった。掲示板に表示された波高の欄には「> ? m」とある。とにかく恐ろしく高いということだけはわかった。ライフセーバーの方々が,それはもう厳しい表情で荒れ狂う波を睨み,そんなことはおかまいなく,レジャーを楽しむ人々は遠浅の海に飛び込んで行った。
友人がサーファーだということで,私もボディボードなるものに挑戦した。水面下を流れる寄せ波と引き波の波長はあまりに長く,強烈な引き波に耐える時間はいつまでも終わらないかのような錯覚さえ覚えた。そしてその上をさらに波が打ち寄せるという二重の構造になっているようだった。寄せ波の上を波が渡るときには,波はただ順番に一列になって寄せるだけだが,引き波の上を寄せるときには,後続の波が前の波を捉え,ひときわ大きな波に変わることがある。その波が狙い目だ。特に足元を流れる引き波が寄せ波に変わる頃,表面に見える波がいくつも重なり,波を追いかけ泳ぐ身体を後押ししてくれる。あとは浜辺まで身を預けるだけでいい。そんなことを幼少の頃によく,浮き輪を使って波に乗りながら考えていたのを久方ぶりに思い出した。ああ懐かしき九十九里浜。ああ思い出の勿来海岸。私は太平洋で育ったのだなぁ。
誰かに連れられなければきっとやることはないであろうオシャレなレジャーに誘ってくれた友人に心からの感謝を。波に乗り波を追い越して水面を疾走する感覚はやはり楽しいものであった。いやぁ楽しかった。
見聞読考録 2019/02/18