見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

オンライン授業のアレコレ

疫病のパンデミックは有史以来,様々な局面で猛威を奮ってきた。近年のものとしては,下記が代表的と言えよう。


1918-20 年 スペインかぜ(インフルエンザ A/H1N1)

1957-58 年 アジアかぜ(インフルエンザ A/H2N2)

1968-69 年 香港かぜ(インフルエンザ A/H3N2)

2002-03 年 SARS コロナウィルス/SARS-CoV

 

しかし,私にとっては今回の新型コロナウィルス/SARS-CoV-2 ほど身近に感じたことはない。今まさに歴史的な事件を体感しているのだと思う。

 

そんな中,私の勤務する京都大学もいよいよ「レベル3」の警戒態勢にランクアップされてしまった。つい三日前,4月18日のことであった。

 

「会議」や「課外活動」などいくつもの項目に渡り規則が書かれているが,そのうちの「職員の勤怠」に限ると下記のようになっている。

 

Level 0: 通常

Level 1: 通勤時の混雑を回避しつつ,時差出勤を推奨する。

Level 2: 執務室における人の密度を抑制するため,必要な業務の見直しを行いつつ,在宅で可能な業務は在宅勤務を推奨する。

Level 3: 運営上必要な業務を絞り,執務の体制を分割し,出勤と在宅勤務と交代で実施する。

Level 4: 非常に優先度の高い最小限の業務に従事する職員のみ出勤し,他は,原則として,在宅勤務とする。

Level 5: 緊急に出勤を要する最小限の要因以外,原則として,全ての職員の出勤を禁止する。

 

家でできることは家出やる,ということだろう。ウィルス拡散防止の手立てとしては真っ当で,仕方のないことであると言わざるを得ない。

 

しかし,滅多にない事態である。とりわけ,授業を持つ教員にとっては,講義にかかるただでさえ膨大なコストをさらに上乗せする厄介な状況になっている。

 

とはいえ,他に方法はない。これを機に授業のオンライン化について真剣に考えてみるのも良いかもしれない。オンライン授業の良いところは,学生がわざわざ決められた時間に出席する必要がないこと,講義を録画してアップロードすれば学生はわからなかった部分を何度も見返すことができることなど,いくつもある。教員にとっても,前年の講義を録画した動画を使い回すことでコストの削減を目指すことができるかもしれない。

 

そんなわけで,オンラインの講義や講演の取り組みをいくつか紹介したい。私も時間のあるときに,少しずつ楽しみながら見ている。本当に楽しい。

 

まずは京都大学松浦健二教授の講義。危機に逸早く対応する柔軟性が素晴らしい。私も登録させてもらえるのだろうか。。

 

次は,同じく京都大学春秋講義。新型コロナウィルスよりずっと前から行われていた試み。先見の明があるというのはこのような例を指すのかもしれない。

 

界隈では,European Society for Evolutionary Biology も全ての学会講演をウェブ配信するという画期的な試みを行っている。例えばこれ,ESEB 2019。TED みたい。

 

新型コロナウィルスの蔓延を事前に予期した人は少ないだろう。ましてやそれを待ち望んだという人は皆無に違いない。そんな非常事態の中で,私たちはピンチをチャンスに変えることができるだろうか。部屋に籠もっていようとも,なすべきことをひとつひとつこなしていきたい。新しいことにチャレンジできればなお良い。

 

欲を言えば,パンデミック以後の時代の生き方をひとりひとりが考えてみるべきだろうと思う。ただ単純に,「経済が V 字回復」とか,「パンデミック以前の水準に」とか,そういう終わり方をしてはいけない。新型コロナウィルスが登場する直前まで,我々が直面していた地球温暖化や環境汚染の問題は何ひとつとして解決しておらず,それらに対処するためには経済活動の在り方を問い直す以外にない。今回の非常事態が,我々の生き方そのものを問う機会になれば良い。心からそう思っている。

 

 

見聞読考録 2020/04/21