見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

(ほぼ)二徹の週末

分子実験のために訪れていたドイツのズュルト島を後にし,本拠地フローニンゲンに戻ってきた。怒涛の一週間だった。


実験の内容は今夏にスピッツベルゲン島で採集したホンケワタガモの糞中の DNA を抽出するというシンプルなものだったが,糞中から DNA を抽出するというのは,僕にとって未知の領域であった。そして続く失敗の日々。


何しろ何が成功なのかよくわからない。DNA が取れていなかったとき,それは実験のやり方がよくなかったのか,それとも元々のうんこが腐っていて DNA が入っていなかったからなのかがわからない。実に難解で,非常に刺激的だった。


やったことのない実験をするというのは,楽しい。解決策を模索する過程を,謎解きのように楽しむことができる。それは良い。それは良いのだが問題は何と言っても,時間がないことであった。100 以上のサンプルがあって,一週間しかないというのに,失敗している暇などあるはずがない。実験に失敗はつきものなのに,失敗している暇がないとはこれいかに。最初から破綻していたわけだ,本来なら最低でも二週間は欲しいところであった。


でも,ドイツの受入研究者の都合もありどうすることもできず。結果として,土曜の朝から月曜の朝まで,研究所で過ごす羽目になってしまった。


閑散とした週末の研究所の,人っ子一人いなくなった暴風吹き荒れる嵐の夜に,Avicii,The Starting Line,Green Day,Sum 41,Ben Folds Five,The OffspringMarilyn Manson,Maximum the Hormone,Judy and Mary あたりのテンションの高すぎる音楽を爆音で響かせて,妙に冴えた頭を揺らして,血眼の目を見開いて,無理やりに乗り切った。土曜の 22:00 頃に研究室の学生がふらっと現れたときには,心底驚いた。向こうもびっくりしたようで,お互いにおっきな声を出して飛び跳ねてしまった。


二日連続の徹夜である。何なら金曜の夜も似たようなものであった。過労死という言葉が脳裏に浮かんだ。こんな無茶をしたのはいつぶりだろうか,昔はよくやっていた気もするが。とはいえ,研究所のソファで少し仮眠を取ったのでそこまでの無理はしていない。はず。たぶん。


無理をした反動からか,フローニンゲンへと向かう帰り道から今日の朝に至るまでの 30 時間のうち,およそ 15 時間は寝ていた。それこそ泥のように寝ていた。今回みたいなときには仕方ないとはいえ,長期的に見ていかに徹夜が効率の悪いことかかがよく分かる。


無事にノルマを達成できたから良かったものの,こんな無茶はもう二度としたくないものだ。


ふぁ〜あ。まだ眠い。。


見聞読考録 2017/10/31