見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

念願の北極圏!念願のスピッツベルゲン島!

眼下に広がる果てしない岩と氷の世界。
上空から見下ろす北極圏の離島,スピッツベルゲン島の光景は凄まじかった。



さすがは,氷の女王が住まうと言われるだけのことはある。
SF 映画で見た,地球ではないどこか別の惑星のようでもあった。
図らずも惑星探検にでも出たような気分になる。


フローニンゲンを発って,52 時間。
飛行機のトラブルにガッツリ巻き込まれ,ようやく辿り着いた。
本当は昨晩には着いているはずだったのだが,まぁこんなこともある。



島内最大の街,ロングイェールビーンに降り立ち,バスで街中へ。
北緯 78 度を誇る,人類の生息する最北の街の一つである。すごいところへ来てしまった。



目を引くのは,露出した礫浜に散らばる何台ものスノーモービルであろうか。
街を一歩出れば氷河に行き着く島内では,通年に渡って重宝するのかもしれない。
極域ならではの光景だろう。


それから,重機と倉庫,陸揚げされた小型船舶。露出する図太いパイプ。
これぞ未開の土地!と言わんばかりの光景である。


そんな中にあっても,カフェやレストランのクオリティは高い。
腹ごしらえだけのつもりだったのに,かれこれ1時間半もくつろいでいる。
まだ暫く居座るつもりだ。


アンティーク調のソファに薄いカーテン越しの西陽が射している。透ける景色には,雪を纏って聳える荒々しい岩峰。対して,ランタンの淡い明かりを灯し,カントリー調のギターミュージックの流れる店内は,どこまでも優しく暖かい。センスの良い店内でコーヒーを片手にPCに向かう至福のひと時を知ってしまったのは,あるいは不幸なことなのかもしれない。


しかしどうしてこれほどまでに,僕の好きな音楽ばかりかかるのか。
ロングイェールビーンは,恐ろしいところである。



ただ,懸念は生き物の影が薄いということだろうか。
草も木も,ほとんど生えていない。今のところ,カタツムリにも出会えていない。
昆虫にすら出会えていないのは,不安を掻き立てられる。


明日の朝にはまたセスナを使って,ここより更に北,研究者の集うニーオスルンという街に飛ぶ。


まぁ今晩くらいは,不安を忘れてゆったりと過ごすのも良いだろう。
ただ幸せを噛み締めるだけの日があっても良いだろう。


見聞読考録 2017/06/11