見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

被災地にはどれほどの研究者が入っているのだろう

同行した方々のうち二人は、大槌町を研究のフィールドにしている方々だった。詳しい話は聞けなかったが、一人は干潟に定点を定めてそこにいる生物を十年間も追っていたのだとか。


津波が樹木に及ぼした影響を調査しに来ていた研究者とも話をすることができた。樹種による塩害に対する抵抗性の違いなどが明確になれば防災対策や都市計画にも役立つ有益な情報を提供することができるだろうとのこと。


研究者は研究者のやり方で、今回の震災と向き合うべきと思う。人の気も知らずに勝手なことを言わせてもらえば、今回の震災の被災地をフィールドとして活動していた研究者は考えようによっては他では得がたいチャンスを手にしたといえると思う。千年に一度とも言われる予測不可能な大災害が起こる前のデータを、数多の研究者がのどから手が出るほど欲しがるだろうデータを、今後二度と取り直すことのできない貴重なデータを、手にしている人間はそうそういない。それが例え、軒下の泥の掻き出しなどのボランティア活動のように直接的な復興活動にはならなくとも、学術的な意味で重要な貢献をするというだけで調査を継続する価値は十二分にある。すでに起こってしまった大災害から、できる限り多くのことを学び取ること。これができるのは研究者だけだろう。


歌手は歌を、芸術家は作品を、研究者は研究を通して今回の震災に相対していくのがいい。それぞれの強みを生かして立ち向かっていければいい。全ての人の独自の視点を、自由な発想を、最大限に活かすことが復興への近道と思う。


見聞読考録 2011/06/07