見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

New Zealand's COVID-19 Lockdown

NZ は昨晩より,COVID-19 拡大防止のため 28 日間の完全外出禁止を実行し始めたようだ。家族以外との接触を全面的に禁止しており,個人宅での集会すら判明した場合には警察が乗り込んでくるそうだ。まだわずか 100 人程度の感染者しか確認されていない国でのこの早急な対応には,脱帽せざるを得ない。

 

New Zealand lockdown: Eerily quiet streets as affairs are put into order - RNZ, 26-Mar-2020

 

東京では昨日,41 人の感染者を確認したという。オーバーシュートの前兆となるかもしれない。そんな状況でも,人々は他人事のように出歩いている。

 

どちらが賢い選択をしたのか,近い将来明らかとなることだろう。

 

 

見聞読考録 2020/03/26

新型コロナウィルスの脅威と驚異

現在世界的に猛威を奮っている新型コロナウィルスの俗称で呼ばれるウィルス。正式名称を SARS-CoV-2,それによる感染症を COVID-19(coronavirus disease 2019)というそうだ。

 

初期対応を誤った日本にも早々に上陸し,あらゆる集会や祭り,卒業式などのイベントの中止,ディズニーランドなどの興行施設の休館,果ては小中学校そのものの休校に至るまで,想像だにしなかった激烈な影響を現代社会に及ぼしている。

 

特に経済的な損失は甚大である。中国やイタリアを中心にパンデミックの中心地となった国々はもはや経済活動どころの騒ぎではない。工場も商店も閉鎖され,飲食店すら営業停止の命令が出ている国も多い。航空会社は国際便の運行を欠航し,不要不急の外出には罰則もつけられるほどとなった。トイレットペーパーやマスクを買い込んだ人々が家に引きこもるという現象が,多くの国々で見られている。休業を余儀なくされ破綻する企業や個人事業者も相次いでいるそうだ。本当にたいへんな事態である。

 

80%ほどの人々にとって,COVID-19 はほとんど風邪と症状が変わらないそうだ。しかし厄介なことに,少なくない人々を重篤な肺炎に陥れ,その数%を確実に死に至らしめる。感染力も高そうだ。空気感染のために感染力の高い疾患として名高い麻疹や百日咳(基本再生算数 12~18 ほど)とは比べられないが,インフルエンザと同等の感染力を誇るようだ(基本再生算数 2~3 ほど)。SARS や未知の病原菌に晒されたとき,動物の持つ免疫システムとはこれほどまでに脆弱であったかと,改めて知らしめられるようだ。

 

つい先月まで NZ に住んでいた身としては,未だ世界的パンデミックの渦中にない NZ を羨ましく思う反面,国際便の長期欠航を決めた New Zealand Air の決定に,先月のうちに戻ってきておいて良かったと冷や汗をかいたりもした。危うく帰国の機会を逃すところであった。この世界同時的な鎖国を誰が予測しただろうか。昨年の今頃には,ヒトの及ぼす環境破壊とエネルギーの過剰使用を嘆きながらも,私も飛行機に乗って日本へ出張に来ていた。あの頃の平和な日常の中で,今の終末的な世界を予測したヒトは少なかろう。

 

一方で,予期せぬデータも出ている。SARS-CoV-2 の脅威が,中国の排出する CO2 量を激減させているというのだ。同様に大気汚染物質の排出量が大幅に軽減されたことにより,ニュースサイトの文章を引用すると「5 歳未満の子ども 1400 名から 4000 名と 70 歳以上の高齢者 5 万 1700 名から 7 万 3000 名の生命が救われたと推定されている」という。現在まで確認されている COVID-19 による死者数など遠く及ばない驚異的な数字である。

 

新型コロナウィルスによる経済活動制限が,大気汚染を改善し多くの生命を救ったとの推定 - Newsweek

さてそうなると,人類の尊ぶ経済活動とは何であったのだろうか。かけがえのない地球を破壊し,数え切れないほどの人命を犠牲にしてまで強行してきた便利さの追求は,本当に人類を幸せに導くのだろうか。

 

資本主義に則った生活基盤そのものから考え直す時に来ているのではないか。私はそう思っている。

 

 

見聞読考録 2020/03/19

住民票が作れない問題

転入届を出すのは,転居から二週間以内とされているらしい。日本国内での転移ならば,直前の管轄から住民票を発行してもらえば良いだけなので,ニュージーランドのような先進国と比較すれば不満はあるものの,割と楽である。

 

しかし,私の直前の居住地はニュージーランドであった。2018年7月,ニュージーランドに1~2年のあいだ移住するにあたり転出届を出した。短期間と言えど数多の日本の納税義務から逃れるためには避けようのない手続きであった。

 

そして,今月の帰国に至る。新しい所属先からも住民票のコピーを提出するよう求められているし,何よりも住民票がなければ日本の誇る皆保険制度の恩恵に与り,保険証を作ることもできない。それなのに,海外から帰ってきたというだけで,たかだか転入届の提出というしょうもない手続きにとんでもない労力を強いられている。

 

私のように日本国籍を持ち海外から再転入する場合,本籍地から戸籍謄本を取り寄せ,自身の証明とする必要があるらしい。私の本籍地に問い合わせてみると,住所の確定しない者の場合,本人受取は不可との回答を得た。運転免許証に記載されている住所に送るという。しかし,私のように海外への転出届を提出した者については,運転免許証に記載されている国内の住所にいるはずがないとみなされ,戸籍謄本が送られてくることはないそうだ。住民票という所在地の確定のために必要な戸籍謄本と取り寄せるにあたり,本人の住まう国内の住所が必要,というのはどういうことか。これほどあからさまな堂々巡りを久しぶりに見た気がする。海外からの転入を想定しきれていないと言わざるを得ない。現代社会を取り巻くグローバル化の潮流などなんのその,とんでもない島国っぷり,呆れ果てるほかない後進国っぷりである。

 

それでは,どうすれば良いのか。親族などに代わりに受け取ってもらうということになるらしい。そのためには依頼先に委任状を送り,依頼した人物に確認を行った上で郵送されるという流れになるそうな。あまりに面倒で,アホらしい。

 

それにもし,天涯孤独な人物であったならどうすれば良いのか。住所を持たぬ流浪の身であったならどうすれば良いのか。

 

ユーラシア大陸にはジプシーと呼ばれる定住地を持たぬ民がいる。モンゴルには,移動式住居・ゲルを携え,羊と共に草原を生きる遊牧民がいる。日本より小さな島国であるニュージーランドでさえ,ショーやダンス,占いなどの活動を生業としながら家族共々,ニュージーランド国内を転々とするサーカス団があった。

 

本来ならば日本にも彼らのように様々な生活様式を持つ民がいて良いはずだ。しかし現状,彼らは日本では生きていけないだろう。何しろ放浪を良しとする旅のヒトは,転入届すらまともに出せやしないのだから。基本的な人権の尊重など,夢のまた夢である。なぜ日本ではこれほど住所を大事にするのか,私には理解できない。

 

どこにいようと私は私だし,いつでも新鮮な刺激を求める私のような根無し草は,無為にひとところに留まることを良しとしない。身分証明などパスポートのひとつもあれば良いはずではないのか。

 

もし万が一,重要書類を送る宛先が必要だからというのが,住所が必須とされる理由であるならば,それはとんでもない時代錯誤な発想と言わざるを得ない。書類など,ウェブ上からダウンロード,もしくはメールで送って貰えれば済むはずだ。未だに紙媒体に頼っているようでは環境危機に対応できず,日本はいつまでも地球の資源を食い荒らし続けることになる。科学技術の発達したこのご時世に,江戸や明治と変わらぬ手書きと郵送とを続けているというのは,いったいどういうことなのか。紙を消費し CO2 を排出し,労力をかけて印刷し,時間をかけて配送し,また膨大なエネルギーをかけて返送するなんて馬鹿げたことを,未だにやっているというのはどういうつもりなのか。ウェブ上に個々人のページを作成して入力すれば,数分で済むような内容ではないのか。

 

もちろん近年の技術の進歩に置き去りにされつつある人々もいるだろう。老人をないがしろにできない,という話も耳にする。しかし私に言わせればその考えは,ご老人をバカにしていると思う。私が数年の時を過ごしたオランダやニュージーランドの街にも当然,ご老人が大勢住まれていたが,スマホでの操作や,役所に設置されたタッチパネルの自動入力を皆そつなくこなされていた。もしわからない方があれば,それこそ役所の担当者が手取り足取り教えてあげれば良いだけのことである。

 

もし現代の日本が,ご老人を盾に変化を拒むような状況にあるならば,それは優しさでも何でもない。怠惰で不勉強で面白みのない愚か者の国ということになろう。地球資源の不当な搾取と大量消費の基に成り立っていた,バブル時代の栄光はもう二度と来ない。いつだって我々は,変化を恐れず柔軟な発想を持たねばならない。一刻も早くそれをなさねば,日本はもうすぐにも沈没するだろう。

 

とにもかくにも。概算すると住民票を入手するためだけに一ヶ月ほどの日数を必要とするようだ。それがない限り,子供らの転校もままならないし,制服だって買えやしない。年度の変わり目から数えて一ヶ月間も余裕を持たせたというのに,初っ端から躓いてしまった。日本のシステムは,ああ,なんて優秀なんだろう。ふざけてる。

 


見聞読考録 2020/03/10

日本生態学会受賞者講演のライブ配信

今日は午前中から,日本生態学会の各受賞者の講演をウェブ上で見ている。総勢7名の研究室のメンバーとプロジェクターに映して見ている。今は日本生態学会賞を受賞された工藤岳博士の講演を見ている。

 

例年のことだが,非常にレベルが高い。にわかに信じがたい労力量に目を見開き,思わず怯んでしまうような美しいデータに愕然とし,身体を張った冗談に笑わせていただいている。

 

コロナウィルスの影響で学会自体の開催が取り止めになってしまった。そんな中,受賞者講演のライブ配信という新たな試みに踏み切ったことは素晴らしいことと思う。

 

現代に生きるヒトは,移動にエネルギーを割きすぎている。持続可能な社会の実現のためにも,仕事の効率化のためにも,移動せずに済むものは,移動しないで済ませた方が良いだろう。

 

とはいえ,受賞者講演のようなお祝い事は会場で見たかったとは思う。聴衆がいないなか話す演者こそ最も辛い思いをしていることだろう。受賞者全員への祝辞はもちろん,聴衆不在の会場でも笑いを取りに来ている演者の方々には特に,心より拍手を贈りたい。

 

 

見聞読考録 2020/03/07

 

帰国とコロナウィルス

2 月 29 日深夜に帰国し,早くも 3 日を日本で過ごしている。とはいえ,未だホテル住まいではあるが。

 

とんでもないタイミングで帰国してしまった。スーパーにはトイレットペーパーもティッシュペーパーもない。この程度のデマに踊らされるとは情けない。

 

明日から開催予定だった生態学会大会も中止になってしまったし,しばらくは大人しく執筆でもしていよう。逆にちょうど良かったかもしれない。

 

 

見聞読考録 2020/03/03

Waitangi Day

先週の2月6日(木)は,NZ の建国記念日に当たる Waitangi Day だった。NZ の数少ない祝日のひとつである。

f:id:kenbun:20200209095241p:plain

北島北部,ノースランド地方。オークランドよりさらに 150 km ほど北上した常夏の地 Waitangi にちなんでいる。ここで,イギリス人入植者と原住民であるマオリ族が協力関係を結ぶ条約を締結した。1840 年のことである。

 

すぐとなりに,Paihia という大きめの街があるものの,Waitangi 自体には現在,NZ を代表する歴史博物館が立つのみである。博物館に収められた資料や再現された映像の数々から,往時の戦々恐々とした一触即発の雰囲気を垣間見れるものの,貝殻の降り積もる砂浜からマオリ族の厳粛な歓迎に至るまで,美しい NZ の原風景を望む長閑な土地となっている。

 

そんな栄えある休日に,そして家族連れが公園でくつろぐ土日に,ひとり人気のない大学に通う日々である。帰国前にやるべき仕事もいよいよ,大詰めとなってきた。

 

出国まで,あと3日。

 

 

見聞読考録 2020/02/09

こちらは大水,あちらは大火事

正解は五右衛門風呂!なんて平和なやりとりができれば良かったのだが,残念ながらなぞなぞではない。

 

こちらの大水とは,現在 NZ 南部を襲っている豪雨と洪水である。私も二度に渡って足を運んだ美しいミルフォードサウンドを始め,広域の道路や市街地が冠水しているようだ。

Southland flooding: Residents in low-lying areas told to evacuate - RNZ
https://www.rnz.co.nz/news/national/408861/southland-flooding-residents-in-low-lying-areas-told-to-evacuate

 

あちらの大火事というのはもちろん,オーストラリアの歴史に残る大規模な山火事のことである。対岸の火事,なんていう言葉もあるが,そんな悠長なことを言っていられるようなものではない。温暖化への影響もあるだろうし,オーストラリアの希少な動植物への被害は甚大である。地球の未来を左右する事件と言える。下の地図を見る限り,オーストラリアの山火事はひとまず収束に向かっているようだが,火が消えればすべて解決できるような問題ではない。これからの復興が本当の山場となるだろう。コアラやオグロイワワラビーのような固有の生き物の行く末も,我々人類のこれからの努力次第で決まる。

https://tourism-australia-bushfire-map.alantgeo.com.au/index.html?lang=ja-jp

 

コロナウィルスの件も含め,何やら不穏なニュースが絶えないが,必要以上に恐れず,冷静に理性を持って行動したい。

 

 

見聞読考録 2020/02/05

地球温暖化問題の現状

恐ろしい記事を読んだ。

 

www.esquire.com

恐ろしくはあるが,特に驚きはない。こういう時代に,我々は生きているのだ。


近い将来,地球がダメになったときに,現代を見返してああだこうだと後悔することになるだろう。2020 年のあの大事なときに,安倍なんちゃらが石炭発電を推進したからとか,なんちゃらトランプが CO2 の排出規制を取っ払ったからとか,そういうことを嘆くのだ。やってられるか。地球の平和な未来を望むなら,安倍もトランプも即刻クビにすべきであろう。

 

www.esquire.com

上の写真集では,日本の事例も紹介されている。

 

他人事ではない。

知らなかったでは済まされない。

辛い現実から目を逸らしてはいけない。

 

今こそ臭いものを封じ込めたフタを開くときである。

入れ物の中身が腐敗し膨張して,最後に爆発する前に。

 

 

見聞読考録 2020/01/16