見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

2017年06月12日の出来事。

極域研究の聖地・ニーオルスンに到着した,昨日の話。というか,日記。


08:00|起床。パンとハムで朝食を。


10:00|タクシーを呼んで,空港へ。こっちの人は,時間をきっちり守るので,ちょっと緊張する。


11:30|悪天候(霧)の影響で,ロングイエールビーンを発つはずの時刻になっても,出発できず。赤と白に彩られたセスナを前にわくわくが止まらない。


12:00|昼食のために再び,タクシーで街へ。すげーおしゃれないい感じのレストランでお手製の美味しいハンバーガーを食べた。スピッツベルゲンスタウトという黒ビールも。研究のためと言いながら,とても優雅である。ありがたいなぁ。


15:30|いよいよ出発。眼下に広がる白い山々は神々しかった。地を這う雲と谷筋を覆う氷河とが溶け合わさって,神秘的な光景を作り出す。セスナの影を纏うブロッケン現象による虹も見れた。


16:00|30 分ほどでニーオルスンに到着。先に現地入りしていたフローニンゲン大学の同僚に,街を案内してもらった。想像以上に便利で,ほとんど天国みたいなところだと思った。せっかくなので,ニーオルスンで生活するためのいろはをここに記しておこう。

1. WiFi を使ってはいけない。精密機器に影響するから,ってほんまかいな。


2. 道路以外の場所に侵入してはいけない。ツンドラを守るため,鳥も営巣しているし。くしくも僕が到着した日に,道端に営巣を始めたキョクアジサシの夫婦が,僕が通り過ぎる度に襲い掛かってくる。


3. 朝食は 07:30-08:30,昼食は 12:00-13:00,夕食は 17:00-18:00。滞在している全員が,同じ食堂に集って食べる。他国の研究者とも容易に交流できるという,最高の環境である。調査などで遅れるときにはその旨を伝えておけば,夜遅くに食べる事もできる。


4. 毎週火曜の夜にはセミナーが開かれる。初日から参加した。氷河末端の氷が海に落ちる場所の話をしていた。海水が循環してプランクトンや魚の密度が高くなるため,アザラシや鳥もたくさん来る,といういかにもな話だった。


5. 調査は基本的に 2人以上で。シロクマ対策のため,ライフルを携帯する。


6. ジムもあるし,ロッククライミングもできる。共用のシャワールームも,サウナもある。自由に弾けるピアノもあるし,映画のDVDも大量にある。いやほんと,何でもある。気がする。すごい。


7. Shop は月曜と木曜にオープン。Bar は木曜と土曜にオープン。


8. シロクマなどの情報は,食堂の掲示板をチェック。全ての建物は常時空いている,鍵はない。シロクマが来たら逃げ込むように,とのこと。面白い。


9. 食堂も常時オープン。コーヒーも飲み放題。サンプリングに持っていきたいときには,魔法瓶を貸してもらえる。すごい。


10. ラウンドリーも自由に使ってよし。シーツなどは自分で洗う必要なし。服を乾かすための高温室もある。すごい。


17:00|夕食。とても美味しい。オランダより美味しい,とかそういうことは言ってはいけない


17:30|週一で行われるセミナーに参加。狭い部屋にプロジェクターを映し,和気藹々と楽しむ。そんなアットホームな,30分くらいのセミナー。素晴らしい。


18:00|食堂でコーヒーを飲みながら,デスクワークを。


19:30|なんだかよくわからないままにパーティに参加。ドイツの施設に大勢が集って騒いだ。研究者ってのはサイコーにイカれている。例えば,グリューワイン(Glühwein)というのだろうか,でっかいボールに入れた大量のワインにレモンやオレンジ,シナモンなどを大量に放り込んで,その上で砂糖を溶かしたお酒を作って飲んだが,問題は砂糖の溶かし方で,ボールの上に金属の橋を渡して,カラーコーンのような形をしたでっかい砂糖にラム酒を染み込ませて火を放つというものだった。溶けた砂糖がキャラメルとなってワインに落ちるのを,みんな子供みたいに騒いで,煽る。ラム酒を注ぎすぎて,ボールのワインそのものも,しまいには机まで燃えていた。アホだ。なんなんだこの人たちは。..グリューワイン自体は,とても美味しかった。


21:00|パーティはまだまだ続く。なんでも,リーダー?が交代する?らしく,年に一度の恒例行事らしい?次なるゲームは,ユニコーンと呼ばれていた。的役の研究者に角のついたヘルメットをかぶせ,そこに数人が寄ってたかって輪っかを投げて入れるというもの。要は輪投げである。大の大人が。輪っかを投げる側の人たちもなぜか,ユニコーンの角を頭につけたり,ユニコーンの柄が描かれたショッキングピンクの服を着たりしていた。素敵すぎる。


21:30|パーティはいつまで続くのか。外に設置されたイスや机に飛び乗った男たちが,地面に降りないようにしながら移動し,建物の壁にかかった輪っかを四苦八苦して取る,というただそれだけのゲームをあれほどに盛り上げるとは,本当に凄いことだ。それでなくてもなかなかに難易度の高いゲームなのに,皆が必死に自分のビールをキープしながら進む様は,確かに滑稽で面白かった。いや,だとしても,なんだこれは。研究者ってのはサイコーにイカれている。僕も見習った方がいいかもしれない。


23:30|ようやくパーティを後にし,寝床へ。朝食は 7:30 からなので,7:00 には起きねばならない。とんでもなくハードでエキサイティングすぎる一日の幕をようやく下ろして眠りについた,外は全然暗くならないが。


いきなり盛り込みすぎだ,初日から。かくいう二日目の今日も,十分に盛り込みすぎだ。
先が思いやられる,良い意味で。


見聞読考録 2017/06/13