見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

自民党の暴挙ー特定秘密保護法の強行採決

今日で、東日本大震災から1000日が経つそうだ。どこかのラジオ番組で誰かがそう言っていた。


それにしても世の中が騒がしい。


思い返せば、震災が発生し、原発が吹っ飛んでから今日までの1000日間、ずっと騒がしいまま時が流れている気がする。


その中でもここ数日の政界の動きは、特に騒がしい。何としても勉学に励まなければならない重要な時期なのだが、心穏やかにいられない。そわそわと浮ついて落ち着かない。


畜生!何してくれとんじゃ自民党!このクソ忙しいときに!

現代生活は基礎的な知識を基盤としていて、基盤の強化は、もっと狭い実用的な目標を通して行われる必要はない。
...(中略)...
基礎を築くには一定の安定性と富が必要だ。明日は命がないかもしれないとか次の食事に事欠くようでは、どうしようもない。

David Sloan Wilson, 2009, みんなの進化学(NHK 出版), p62


基礎を築くのに重要な“安定性”が、今の自分には足りていない。


「秘密保護法反対」1万人が怒りの声上げる(OurPlanetTV)
Youtube, 2013/11/22


特定秘密保護法案、5日に参院委で強行採決も
Huff Post Politics, 2013/12/04


秘密保護法案、ピレイ国連弁務官が懸念「急ぐべきでない」
Huff Post Politics, 2013/12/03


強行採決、全国で怒りと不安 秘密保護法案、衆院通過
朝日新聞デジタル, 2013/11/27

「今も議員会館の外では「特定機密保護法絶対阻止!」を叫ぶ大音量が鳴り響いています。いかなる勢力なのか知る由もありませんが、左右どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう。
主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべきなのであって、単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思います」

石破茂氏がブログの記述を撤回 「デモの参加者はテロリスト?」 特定秘密保護法案を危惧する声も
Huff Post Politics, 2013/12/02

意見陳述人が続々と懸念を表明「何が秘密なのかわからない構造になっている」
福島弁護士会副会長の槇裕康氏は、「政府は、原発情報をテロ防止対策にからめ、特定秘密の是非を二転三転させて使い分けている。それは、法律の曖昧さを示していて、実際に施行されたら、どうなるかわからない。あまりにも内容があいまいで、広範な範囲になってしまう。施行後は、何が秘密なのかわからない構造になっているので、どうすることもできない」と懸念を表明した。
福島第一原発の汚染水漏えいも、テロ防止事項で隠される可能性が高い。国民の生命、身体の安全の基本となる情報すら秘匿される。むしろ、原発事故での教訓を生かし、情報の公開・公表を押しすすめる法制度の方が重要だ。海外における日本の信頼は、まず国民の信頼があってこそ成り立つ。国民の信頼を無視し、海外に信頼されても、それは政府の独善にすぎない。日弁連福島県弁護士会、他県弁護士会は、ツワネ原則にのっとって反対意見書を公表している。白紙にもどし見直すべきだ」と訴えた。
桜の聖母短期大学キャリア教養学科教授の二瓶由美子氏は、「廃案を求める。全国で公聴会を開き、多くの国民の声を聞くべき。チェルノブイリを視察して思ったことは、情報の共有と教育の重要性だった。この法案は、時の流れを逆行させる法案だ。国家公務員法100条は、秘密保持を義務づけている」と話し、さらに、平成14年8月29日に、福島第一原発の危険性をアメリカの原子炉メーカーの社員が告発していた事件について説明した。
「私たちは、子どもたち、孫たちを守っていかなくてはならない。そのためには、情報公開をすべきだ。特定秘密指定の拡大の懸念があり、国会が議論の場ではなくなる。さらに、適正評価制度は憲法14条に反する。マスコミのほとんどの世論調査では、7〜8割の国民が反対している。ストップしてほしい」と訴えた。

【福島】特定秘密保護法案、福島で公聴会 意見陳述者7人全員が反対
IWJ Independent Web Journal, 2013/11/25

強行採決 無視された福島の声
11月26日午前11時15分、衆議院の特別委員会で「特定秘密保護法案」が強行採決され、自民・公明・みんなの党の賛成起立多数で可決。そして同日、午後20時過ぎ、衆議院本会議においても、自民・公明・みんなの党の賛成起立多数で可決され、翌日、参議院で審議入りしました。
12月6日の今国会の会期末までにこの法案を成立させることが、与党・政府のもくろみです。
26日は国会周辺に朝早くから大勢の市民が駆けつけ、法案に反対する抗議行動を行い、衆議院本会議で可決された後も、「採決撤回!」のシュプレヒコールがあがり続けました。IWJは朝8時から夜9時40分まで、断続的に続いたこの抗議行動の模様を中継し続けました。
衆院可決の前日、11月25日には福島県福島市で「特定秘密保護法案」に関する地方公聴会が行われました。県内の首長、学者、弁護士ら7人の意見陳述者の全員が反対を表明しました。公聴会では、「全国で地方公聴会を開催し、被災地を含めた地方の意見、もっと多くの国民の声を拾ってほしい」などの強い要望があがりました。


海外からも厳しい批判の声
実際、この「世界の笑いもの」である法案に対し、海外からも次々に批判の声が高まっています。
11月21日、国連の人権理事会の特別報告者2名が、この法案に懸念を表明し、日本政府に透明性を確保するよう要請したのです。
表現の自由に関する特別報告者であるフランク・ラ・ルー氏は、「法案は極めて広範囲で曖昧」としたうえで、「内部告発者やジャーナリストに重大な脅威をはらんでいる」と法案を批判。「公共に関わる情報を秘密にするのは、公開するより公益性が上回る場合だけであり、その場合でも独立機関による審査が不可欠だ」と主張しました。
また、「ジャーナリストや個人が、公益のためと信じて情報を公にした時、他の個人を差し迫った危険にさらさない限り、いかなる処罰も受けてはならない」と、勇気をもって内部告発を行った者、公益のために真実を公にしたジャーナリストは守らなくてはならないと訴えたのです。傾聴すべき卓見です。
また、11月23日には、米国防総省NSC国家安全保障会議)の高官を務めた安全保障の専門家、モートン・ハルペリン氏は安倍政権のこの法案をめぐる姿勢について共同通信のインタビューに応え、「日本はなぜ国際基準(ツワネ原則)から逸脱するのか、政府は国会採決の前に説明しなければならない。民主主義社会の義務だ」と批判しました。


福島原発事故ではすでに住民の命に関わる情報が「秘密」に
民主主義の基本である「国民の声を聞く」「国民にきちんと説明する」という対話や応答の過程をすっとばして、ひたすらあわただしく急ぐ安倍政権の暴挙に、前述した25日の福島の公聴会でも批判の声があがりました。
意見陳述者である馬場有(ばばたもつ)浪江町長は、「われわれは、民主主義の根幹の憲法13条の幸福追求権、生存権、財産権、すべて侵害されている。基本的人権を守って、国民に情報公開をしてほしい。慎重に対応して、十分に国民のために議論するべきだ」と訴えました。
そして馬場氏は、政府の情報公開のあり方そのものにも、疑問を呈しました。
「2011年3月12日の夜中、タイベック(防護服)を着た警察官がいた。私たちはそれを見て『なんだあの宇宙人は』と思った。我々には何の情報も来なかった」
この指摘は重要です。森雅子担当大臣は、原発に関する情報は特定秘密の対象とならないが、「原発の警備情報は特定秘密になりうる」と矛盾する発言を繰り返しています。馬場氏が語ったエピソードは、「原発の警備」を理由に、住民の命に関わる情報が既に隠蔽されており、今後さらに悪化する危険性を指摘しています。


原発情報を米軍には提供していた日本政府
さらにこの福島の公聴会では、秘密保護法の「本質」とも言うべき内容が明らかにされました。
いわき市議会議員の佐藤和良氏は、「事故後、女川沖にいた米軍の第7艦隊が避難した。米国は4号機燃料の破損によるジルコニウム火災を想定していたといいます。しかし私たちには何の情報もきませんでした。私たちは『棄民』なのか」と証言しました。
日本政府は、米軍には情報を提供していたが、福島県民には情報を開示しなかったのです。そして、こうした主権者たる国民の生命よりも米軍を最優先する政府の姿勢は、そのまま秘密保護法にも盛り込まれているのです。


「対中国・北朝鮮スパイ防止法」という誤った認識
こうした、米国の言いなりになっている日本政府に対する批判に対し、「日本は中国や北朝鮮のスパイ天国」であり、秘密保護法は「対中国・北朝鮮スパイ防止法だ」と、推進派からは反論があがります。
しかし、元外務省国際情報局局長という日本のインテリジェンスのトップを歩んできた孫崎氏は私のインタビューで、自らの経験もふまえて、そうした推進派の認識は「全くの誤りだ」と喝破しました。
孫崎氏によれば、「日本の中国や北朝鮮に対する防諜は、世界的にみても非常に高い水準」だと言うのです。そして、「日本が唯一防諜できない国が米国だ」と証言しました。
日本が「スパイ天国」だとすれば、それは米国にとっての「スパイ天国」という意味です。つまり秘密保護法は、そうした米国のスパイ活動を合法化し、日本政府自らが積極的に情報提供することを法制度化する「米国スパイ合法化法案」と言うべきものなのです。


12月7日からは、シンガポールでTPP交渉の閣僚会合が開かれます。知的財産権の問題を始め、関税の問題など、各国の利害が対立しているにもかかわらず、米国は年内妥結を目指してゴリ押しを続けています。12月6日までに米国のリクエストに応じて特定秘密保護法を成立させ、手土産を携えて日本政府はTPP交渉に臨もうとしているのだと思われます。
TPPもまた、秘密だらけの交渉です。秘密の暗闇の中で、TPPと日米並行協議による「経済植民地化」と特定秘密保護法集団的自衛権行使容認による「軍事属国化」が進んでいってしまう。この2つは同じコインの裏表です。

国民無視の「強行採決」 秘密保護法の先にある「米国の軍事属国化」
BLOGOS, 2013/12/03



最初に引用した D.S. Wilson の著書「みんなの進化学」の文章には、続きがある。

基礎科学のための基礎科学の進歩に投資する、安定性と富と見識をもつ国が地球上に少なくともいくつかあるのは、ありがたいことだ。

同, p63


これまで日本は、地球上に存在する数少ない「安定性と富と見識をもつ国」と呼べたかもしれない。でも、これからはどうだろうか?表現の自由もない野蛮な国に、正常な“基礎”を築く余地が残るだろうか?


日本がどんどんダメに、どんどん後進国になっていくような気がしてならない。


見聞読考録 2013/12/04