見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

小泉純一郎の反原発論

あのカリスマ、小泉純一郎元首相が唐突に動き出した。

小泉氏は原発ゼロに考えを転換した理由として、使用済み核燃料の最終処分場建設の見通しが立たないことを挙げ、「そんなことに莫大(ばくだい)な資金を使うなら、自然を資源にしたさまざまなエネルギー源を開発するために使った方がいい」と強調。さらに「事故前から処分場のめどを付けていないのに、事故後も、めどが付けば原発はやっていけると言う方が楽観的で無責任だ」と述べ、原発推進論者を批判した。

小泉純一郎元首相「人間の考え変わる」=原発推進論者を批判 - 時事通信社, 2013/11/03


素晴らしい。やはりはずば抜けた判断力と実行力の持ち主なんだなぁ、と感心してしまう。


福島第一の事故以来、もはや手放しで原発の使用に賛成する人は少ないのではないだろうか。否、原発を作る企業や官僚、政治家、その取り巻きはその限りではないだろう。推進の立場をとる人々の発言を見るとき、その人々が原発を推進することによって利益を得てはいないかどうかをしかと見極めなければならない。踊らされてはいけない。僕には結論は明白に思える。


小泉元首相がこのような発言をするようになったのは、フィンランド・オルキルオト島にある世界唯一の放射性廃棄物処理施設「オンカロ」を視察してからだという。

原発は「トイレなきマンション」である。どの国も核廃棄物最終処分場(=トイレ)を造りたいが、危険施設だから引き受け手がない。「オンカロ」は世界で唯一、着工された最終処分場だ。2020 年から一部で利用が始まる。

風知草:小泉純一郎の「原発ゼロ」 - 毎日jp,2013/08/26


オンカロ」については、2010 年公開のドキュメンタリー映画「地下深く永遠に 〜10万年後の安全〜」に詳しい。福島第一の事故以来ずいぶん話題になったので、知っている人もいるだろう。


10万年とは、使用済み核燃料、すなわち「核のゴミ」が放つ放射線が安全なレベルに達するまでにかかると推定される年数のこと。原発を使うということは、それほどまでに遠い未来の安全をも揺るがす。
あなたはそれを理解して、原発を使っていますか?


映画の伝えるメッセージは単純、かつ痛烈だ。

ここはあなたたち未来の人類が来てはならない場所。「オンカロ」です。フィンランド語で「隠し場所」。
オンカロ」は10万年の間、持ちこたえなければなりません。
人間の作ったものがその十分の一でさえ、姿を保ったことはありません。


映画は未来の人類に語りかけるように進められる。

放射性廃棄物を消し去ることはできません。
害のないものにすることもできません。

使用済み核燃料を安定した状態で貯蔵しておける確実な場所は、地上にはありません。
例え百年でも、難しいですね。何千年なんて、とても保証できません。

放っておくわけにはいきません。
この地球上に住む人びとが真剣に考えなければならない問題です。
原子力発電に賛成か反対かは問題ではありません。

地下深く永遠に 〜10万年後の安全〜 - Michael Madsen(監督),2010/01/06

「昭和の戦争だって、満州中国東北部)から撤退すればいいのに、できなかった。『原発を失ったら経済成長できない』と経済界は言うけど、そんなことないね。昔も『満州は日本の生命線』と言ったけど、満州を失ったって日本は発展したじゃないか」

「必要は発明の母って言うだろ? 敗戦、石油ショック東日本大震災。ピンチはチャンス。自然を資源にする循環型社会を、日本がつくりゃいい」

風知草:小泉純一郎の「原発ゼロ」 - 毎日jp,2013/08/26


さてこの動き、どのような結末を迎えるのか。
期待せずに見ていよう。


見聞読考録 2013/11/04