見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

津波の惨状

多賀城市に入ったあたりだろうか。
周囲の景色が一変した。


船の往来が盛んな塩釜の港。おいしい海産物を求めて足を運んだこともあった。
いつもは大勢の観光客でにぎわう松島の中心街。友人を、知人を、客を、幾度となく案内した。


今は人気もまばら。無残に荒らされた姿を晒す。


交差点に佇む信号機の空ろな暗い目。
狭い路地に積み重なる車の残骸。
向こう側の景色が見える建物。剥がれ落ちた外壁。
同じ向きに倒れた街路樹。
路肩にあるのは泥にまみれたゴミの山と横倒しの車、それと船。



地形の変わった浜に乗り上げる一隻の船。松島の街には、街全体が干潟になったかのような、つんと鼻を突く潮の匂いが立ち込めていた。


それでも。


それでも、松島は美しかった。


少し見方を変えれば、


街には明かりも灯っていた(牛たん炭焼・利久松島店も営業を再開していた!)。
幹線道路には作業用車両が、自家用車が、忙しなく行き来していた。
島巡りの遊覧船は客を待つかのようにしっかりと桟橋につながっていた。
街のあちこちで人々が忙しく復旧作業に勤しんでいた。
小さな男の子が母親と手をつないで楽しそうに笑っていた。


東北地方随一の観光名所、日本三景松島は、たった一ヶ月で復興に向けて躍進しているように見えた。湾に浮かぶ島々に守られて津波の被害が他より小さかったとは聞いているが、それでも、すごいことだ。松島が東北地方復興の拠点になるかもしれない。逸早い復興を願う。


見聞読考録 2011/04/10