見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

昨日の豪雨

親類の結婚式があり,実家に帰省中。
よりにもよって昨日の豪雨の中,京都から千葉まで運転する羽目になった。

 

京都を出発し滋賀を抜け,三重・愛知に入るあたりから滅多にお目にかかれないような土砂降りに見舞われ始め,そこから延々と神奈川を抜けるくらいまでバケツをひっくり返したような雨が降り続けていた。その間,実に 6 時間半!

 

雨粒,というかもう滝のようだった。ワイパーを最速にしてもぜんぜん追いつかないし,分厚い雨雲とアスファルトで世界はほとんど灰色一色。前を走る車のテールランプとハザードランプだけが,唯一の色を持って生命の危機を伝えていた。一番ひどい時には,前を走る車のテールランプも霞むほどの雨だった。それにもかかわらず急に現れる交通渋滞と車線規制。故障車も多かったような気がする。

 

高速道路だというのに所々,路面が大きな水溜りみたいになって,ドシャーという音と共にブレーキがかかったような感じになる。時にはずーっとそんな感じのところを走り続けたりしている。しかも視界が悪すぎて,どこに水が溜っているかなんて見えやしない。中央分離帯を挟んで走っているトラックが水の塊をカーテンのように高々と跳ね上げ,反対車線を走っているこちら側の二車線分まで降り注ぐ。運悪くフロントガラスに直撃した時は,もう完全に何も見えない。対向車線を等間隔でトラックが走っていたときなどは,さながらドバイやラスベガスの巨大な噴水ショーのようでたいへん面白かった。もうちょっと安全なところから鑑賞できれば良かったのだが。

 

通過した川はことごとく茶色く渦巻き,氾濫間際。携帯の警報も鳴り止まない。終いには雷まで光り始める始末。大河川を渡る橋の途中で流れたアラームによると,氾濫間際なのは視界に映る範囲だけで,どの川もすでに氾濫している最中だったらしい。

 

そんな中,東名高速が通行止めに。愛知の東,豊橋のあたりだっただろうか。1日の雨量が 500 mm を超えたという浜松のあたりだっただろうか。必死だったので詳しく覚えていないが,ナビに従い,下道を走って新東名高速への乗り換えを急ぐ。よりにもよって案内された道の大半が川沿いの土手の上で,道路のすぐ下まで押し寄せる濁流には恐怖しかなかった。あとちょっと遅かったら我々の通った道路は全部冠水して水害の最中に孤立してたんじゃないかと思う。

 

ようやく辿り着いた新東名高速も,折り悪くゲートが閉鎖される。高速の入口の料金所の手前で U ターンさせられ,またも露頭に迷うこととなった。ナビによると再度,東名高速を利用しろとのこと。坂道はどこも川みたいだし,側溝はキャパオーバーして泥水を噴き上げている。峠道を通らされた時には道路脇の急斜面から流れ出る謎の激流にビビり,田んぼの脇を通るときには完全に溢れている田んぼだか用水路だかから溢れ出た冠水にビビりながら,下道を 1~2 時間ほど走って東名高速に戻った。確か,掛川のあたりだったと思う。

 

東名高速に戻ってからはひたすら,一度も休憩を取らずに走り続け,静岡を抜け,清水を抜け,富士を抜け,御殿場を抜け,今回特に集中的な降雨被害を受けたエリアをほぼ全部突っ切って,ようやく車を停めたのは神奈川の海老名 SA でのことだった。聞くところによるとほんのタッチの差で,清水とか御殿場のあたりで東名高速が封鎖され,後続の車両はまた下道に投げ出されたらしい。危ないところだった。。

 

同乗する 1 歳の双子,3 歳児を始め,みんなよく頑張ってくれた(最も頑張ったのは,実際に運転を担当した僕と妻だったと思うが)。常では 6~7 時間もあれば着くはずの行程を,実に 10 時間!もかけて,真夜中に到着した。ヤバかった,死ぬ思いした。

 

というのは本当に本当のことで,ハンドルを握る手の力を 6 時間半,一度も抜けなかったほど恐ろしかったのだが,反面,対抗車の織りなす噴水ショーに喜び,滑滝になってしまった下道に笑い,ただのでっかい池になってしまった一面の田んぼに驚き,今にも溢れ出しそうな波打つ河川(中洲の樹木の樹冠しか見えてない!)に騒ぎに騒いだ道中でもあった。割と楽しかった。もう二度と御免被るが。

 

2023年06月03日午前10時までの24時間降雨量。tenki.jp より引用。

 


見聞読考録 2023/06/03