見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

南国から北国へ

こう書いてみると、"南国" は音読みなのに "北国" は訓読みなんだなぁ。


えーそんなわけで、昨日、仙台に復帰しました。
二週間、不慣れな南の島国でのサンプリングを、我ながらよくこなしたと思う。いろんなもん見たなー。うん。楽しかった。
ハブに会わずに済んだのは、運が良かった。正直なところ、ちょっと見てみたかったけれども。


全行程 14日間。Just 二週間。
奄美大島→徳之島→屋久島 +学会(東京)
特に終盤、屋久島らへんからが、かなりハードだった。


奄美大島と徳之島でのサンプリング。見るもの全てが目新しく、とても刺激的だった。だいたいのミッションもこなした。奄美大島で過去に一度だけ一個体が採られたという記録があるだけの、その標本すら残っていないために本当に採られたかどうかすら怪しい生き物を採集するという、難易度の高いミッションすら達成した。大収穫と言って良いだろう。


屋久島での、二泊三日の本格登山。一日目は快晴。20kg 近いザックを背負ってもなお足取りは軽かった。だが、山というものは天候でがらりと表情を変える。稜線を歩く二日目。襲い来る暴風雨。大粒の雨が白い塊となって次々と押し寄せ、標高 1,700m の稜線を一瞬で駆け抜けていく。バチバチと頬を叩く雨風に容赦はなく、前を向くことも難しい。殺される、と本気で思った。三日目、雲一つなく晴れ渡る空に、涙さえ浮かんできたくらいだ。山であんなに怖い思いをしたのは、本当に久しぶり。判断を誤っていれば死んでいたかもしれない。


締めに控えた東京での学会発表。あろうことかスライドのプリントアウトを、行きの飛行機の中に置き忘れた。おかげで聴衆を前にして、自分のスライドと二週間ぶりに対面することになってしまった。学会であんなに怖い思いをしたのも、本当に久しぶり。判断を誤っていれば・・・考えたくもない。


でもまぁ総じて、大成功の旅路だったのではなかろうか。目的もだいたい達成できたし。
いや、まだ成功というには早いな。サンプリングでは後処理こそが大事。それがなければデータにならない。データにならなければ、行かなかったことに同じだろう。これからが正念場だ。


見聞読考録 2012/04/16