見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

小笠原旅行記 3.兄島 その二 2010/02/26-03/02

兄島に限った話ではないが、小笠原諸島は外観からしてどこか目を引くものがある。来る人を拒むように海面から直にそそり立つ断崖。周囲に浮かぶ奇岩怪石。兄島ほどの広さをもつ島でさえ、上陸できるポイントは極めて少ない。一度などは波に揺られる船からごつごつした岩場に飛び移らなければならなかったほどだ。



兄島西岸。急崖と奇岩の織り成す芸術的な光景が広がる。


無人岩 (ボニナイト Boninite)という岩石がある。無人 (ぼにん、むにん)とは小笠原の別名。小笠原を模式地とする世界的にも非常に珍しい岩石だそうだ。たとえばこちらのサイトなどでこんな風に詳しく紹介されていた。

ボニナイトはマグネシウムの含有量が高い特殊な安山岩の一種である。国際地質学連合(IUGS)の推奨では「SiO2 > 52%, MgO > 8%, TiO2 < 0.5%の化学組成を有する火山岩」とされている(Le Maitre et al., 2002)。模式地の小笠原では、典型的にはガラス質で斜長石を欠き、古銅輝石に富む安山岩のことを指す。

無人岩が風化すると硬質な緑色の古銅輝石が残される。透明に輝くうぐいす砂はこうしてできるのだそうだ。うぐいす砂の砂浜が見られるのは世界中で小笠原だけ、と同行した昆虫の研究者がなぜか自慢げに教えてくれた。



兄島で拾った無人岩。中央よりやや左下の濃緑色の長方形の結晶が古銅輝石、だと思う。岩石の穴を埋めるように点在する白い結晶は沸石、だと思う。よく知らないけど。
ちなみに兄島は全域が国立公園の特別保護地区なので、石一つ、砂粒一つ、許可なく意図的に持ち出すことはできない。


おそらく小笠原の奇妙な島の景観も、島の地質、岩質の産物なのではないだろうか。陸地の景観には少なからずその基岩が影響しているはずと思う。


2010/04/04 見聞読考録