見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

転写因子結合モデル

セミナーで友人の発表を聴いた。
以下に簡単に内容とそこから考えたことをメモる。


友人が取り組んでいる研究内容は、量的形質に働く選択がどのようにDNAの変異として蓄積していくのかを個体ベースのモデルから観ていこうというもの。たぶん。
選択という現象がDNAの分子進化にどのような影響を与えるのか、実はよくわかっていない。僕自身、初めてこの疑問を知ったときはハッとした。盲点だった。


ダーウィンの示した自然選択による進化の理論には、1)ある形質の表現型に個体間で変異があること、2)少なくとも表現型を司る要因の一部は遺伝的要因であること、という2つの前提がある。多様性のない集団に進化はない、と言い換えても良い。たぶん。
この前提が意味することを後に発展した集団遺伝学の内容を踏まえて、選択によって変化した各表現型の集団内の頻度が遺伝により次世代に受け継がれてこそ自然選択という現象が成立する、と言い換えることもできる。この、選択→各表現型の集団内の頻度の変化→DNAの分子進化、という一連の流れは選択による進化を説明する上で欠くことができない。
“選択”と“各表現型の集団内の頻度の変化”とを繋ぐ“→”に関してはこれまで十分な説明がなされてきた。しかし、“DNAの分子進化”に繋がる“→”にはまだまだ未解決の問題が多い。例えば、今回のセミナーの内容と関連したところでは、遺伝子の発現量に影響を与える転写因子の種類・数・組み合わせ・その影響の幅、転写因子とDNAの塩基置換との関係、塩基置換の順序の違いによる適応度の変化等々、突き詰めて考えると考慮すべき要素が果てしなく多いということが問題の解決を遅らている要因だろう。このあやふやな部分を突き詰めて考えようというのが、研究の目的ということか。素人目に見てもかなり難しそうだ。


いろいろと書いてはみたものの、僕自身まだよく理解できていない。
上の文章も誤りだらけかもしれない。
普段触れることの少ない領域ということもあり、実に難解だった。勉強不足を改めて実感。モデルの話に強くなりたいなぁ。今年の目標の一つにしよう。


2010/01/07 見聞読考録