見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

とある担当者の残念

講演・観察会を依頼されたのは今年2月17日のことだった。
今日で,250と1日が経過したことになる。
それなのに未だ,講演が実現していないばかりか,日程すら決まっていない。


これまでの経過を振り返ってみる。


【2月17日】
講演・観察会の依頼を受けた。5月6月がベストシーズンだとのことだったので,ではその頃に開催しましょうというような,ぼんやりとした約束をして,一度やりとりを終えた。


【6月7日】
音沙汰がないので,問い合わせのメールをした。それから,もはや僕の予定が9月中旬まで埋まってしまっていて,それ以降に日程を組んでいただきたいということも。すると,5月6月に開催できなかったことを謝られた。さらに,10月21・22日の開催を提案いただいた。これを承諾。


【10月3日】
音沙汰がないので,問い合わせのメールをした。すると,10月21・22日ではなく,11月11・13・19日のいずれかにずらしてほしいとの回答。それから,2日間ではなく,半日だけの開催にして欲しい,とのこと。たまらず電話をした。結局,11月7日に開催することに決定した。


【10月13日】
音沙汰がないので,問合わせのメールをした。回答がない。


【10月14日】
夕方に,電話。担当者にすぐにつながった。なにやらものすごく怯えた様子で,今にも泣き出しそうな声をしていた。泣きたいのはこっちの方だ。こちらの質問に対して,答えようとするのだが,答えきる前に声が消えて語尾が聞こえなくなってしまう。「いえいえ,そんなに恐縮することはありません。大丈夫ですよ。お互いの都合を合わせて今後の予定を決めましょう」というように,できるだけ優しく語りかけ会話を促しつつ,辛抱強く待つと,30秒ほどの無音電話となった。辛い。結論としては上司に聞いて,また連絡するとのことだった。もう泣きたい。とはいえ,11月7日に開催するということに変更はないようだ。


【10月17日】
夕方に,再び電話。担当者と話をするも,進展はないようだ。


【10月25日】
音沙汰がないので,再び電話。またも「申し訳ありません」を連発し,次第に声のトーンが落ち,またも無音に吸い込まれてゆく。いえいえ,大丈夫です,と励ましながら,必死に会話を進めた。でも日程が決まらない理由だけはどうしても知りたかったので聞いてみたところ,一般市民にしっかりと周知させてから開催したいから,という,大きく的を外すどころか,なんなら的に射る矢に矢じりを付け忘れるくらいの解答をいただいたので,上司の方とお話させていただけるようお願いした。すると,私の方で日程を決めますから!と慌てたようなお返事をいただいた。どうどうどう,そんなに取り乱していったいどうなされたのか。しかし,上司の方と話をした方が早そうなので,取り次いでもらえるようお願いし,しぶしぶながら承諾をいただいた。上司の方は夕方には戻るので,戻り次第電話をくださるそう。
電話を終えて数分後,「もしや上司がすんごい怖い方で,いじめられているのではないか」という可能性に行き当たった。僕のせいで上司にこっぴどく叱られてしまうのは可哀想である。だから元気がなかったのではないだろうか。僕の講演の予定を忘れていたのではなく,覚えていたけれども上司に話しかけられないばかりに日程調整が進まず,気を病んでいたのではないだろうか。こんなことが原因で心に傷を負ってほしくはない。傷心の余りインドに放浪の旅に出てしまうかもしれない。旅に出たは良いものの,ガンジス川で水浴びをしているところを泥棒に狙われ,一切を盗まれたところを現地の方に助けられ,めでたくその方と一緒にインドに永住し,幸せな人生を歩むことになってしまうかもしれない。んー,それはそれで大いにけっこうな気もしたが,いやしかし,上司に叱られるのはやはり可哀想である。仕方がないので改めて電話をした。


僕「お元気がないようですが,大丈夫ですか。上司の方が怖いのですか。僕で良ければお話をお聞きしましょうか」


担「いえそんなことはありません。かえってご心配をおかけして申し訳ありません」


ち,違ったぁぁあ!


ああ!恥ずかしい!


なんて恥ずかしい!


どうも僕の思い違いだったようである。
はー,恥ずかしい。穴があったら入りたい。


【10月25日ついさっき】

日程につきまして、こちらの都合で申し訳ございませんが日程を変更させていただけませんでしょうか?
11月14日以降にさせていただけませんでしょうか?(19日、25日以外)
ご都合のよろしい日はございますでしょうか?

上司から電話をするようにいたします。
明日以降でご都合のよろしい時間帯はありますでしょうか?


あーあ。電話くらい,すぐにかけてほしかったなぁ。
約束事をひとつでも増やすことが,どれほど他人の負担になっているのか,考えて欲しい。


僕だけじゃないと思うけど,研究者って,すごい忙しい職業だと思う。例えば僕の場合,この11月だけで,1件の学会発表と2件の観察会,3件の講演会が入っている上に,一週間くらいは札幌にいない。これほど実現可能性の低い予定をカレンダーに書き込んでいる余裕はない。一日だって無駄にできる日はないのだ。


残念だが,この話はなかったことにしようと思う。
是非やらせていただきたかった。ずっと楽しみにしていたのに,本当に残念だ。


見聞読考録 2016/10/25