見聞読考録

進化生態学を志す若手研究者のブログです。NZ 在住。

なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか?

研究室の後輩に面白いものを教えてもらった。松尾豊博士の書かれた "論文" である。論文の体裁を取っているが,出版されたものだろうか。それとも,フェイクだろうか。しかし,内容は確かに斬新で面白く,普遍的かつ有意義である。素晴らしい研究であると絶賛したい。

 

松尾豊 - なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか?

http://ymatsuo.com/papers/neru.pdf

 

下記に一部,抜粋する。

 

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【Summary】

研究者はいつも締め切りに追われている。余裕をもって早くやらないといけないのはわかっている。毎回反省するのに,今回もまた締め切りぎりぎりになる。なぜできないのだろうか?我々はあほなのだろうか?本論文では,研究者の創造的なタスクにとって,締め切りが重要な要素となっていることを,リソース配分のモデルを使って説明する。

 

【はじめに】

我々は,よく締め切りに追われている。締め切り間際にバタバタする人を,水口(2006)ではバタ男と呼んでいるが,研究者は少なからずこの傾向があるのではないだろうか。

(中略)

従来から,作家が締め切りに追われて編集者にホテルに缶詰にされるなんて話はよくあるが,こういった傾向は普遍性が高いものかもしれない。つまり,締め切り直前になるのはそうならざるを得ない理由があるということである。

 

ネルー値の提案】

松尾らは,研究者における精神的ゆとりを現す単位,ネルー値を提案している(松尾・他,2006)。「今日,このまま寝てしまっても締め切り等に影響がない状態」が 1 ネルーであり,「n 日寝てしまっても締め切り等に影響がない状態」が n ネルーである。今日締め切りの仕事をまだ達成していない状態は 0 ネルーである*1。まずは,タスクの効率的な遂行には,現状のネルー値が低い状態を抜け出して,高いネルー値にした上で,タスクの最適な配置を行わなければならないというのが,筆者のひとつめの考えである。

*1 一部に,ネルーは「寝る」だという安易な説があるが,インドの首相ジャワハルラール・ネルー(1889~1964。ガンジーの父である)がこの概念を最初に唱えたという説が専門家の間では有力である。

 

【まとめと今後の課題】

集中力を上げるのは大変である。人は,集中力を上げることをできるだけ節約する傾向があるようにも思える。しかし,忘れてはならないのは,創造的な仕事は,集中しなければ進まないことである。集中力は多くの場合,時間の制約がなければ上げにくいものであって,締め切りはそれに寄与しているから,我々はいわば締め切りのおかげでパフォーマンスを出せるわけである。しかし,締め切りの直前にやることが重要なのではなく,集中力を上げることが重要であると理解する必要がある。我々が反省すべきは「早めにやっておけば良かった」ではなく,「もっと集中すべきだった」である。追い込まれなくても集中力を上げるために自分なりの方策を編み出していくことは,研究者が健康で文化的な最低限度の生活を送る上で,欠くことのできないスキルではないだろうか。そのスキルは,高いネルー値を可能にし,さらなる仕事の効率化につながり,今日もよく寝れるというわけである。

 

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はぁぁ,笑った。最高。

抜粋はしなかったが,一連のアイディアは数理モデルによって示されている。数理モデルって素敵。。

 

 

見聞読考録 2020/08/21