見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

オーストラリアの山火事

オーストラリアを焼く山火事が,前代未聞のレベルに達している。昨年から続く山火事で630 万ヘクタールもの広大な森林が燃え尽きてしまったという。630 万ヘクタールと言えば,関東圏7県全域に,静岡,山梨,長野,愛知の4県を加えた面積よりさらに広大な面積が,一連の山火事によって焼け野原にされてしまったということである。島国・日本では想像すらできないとんでもない規模である。

 

www.amsj.com.au- Australasian Mine Safety Journal

 

archive.boston.com - The Big Picture, Boston.com

山火事の原因は諸説あり,引き金は放火とも言われているが,これほどまでに被害が拡大したのはやはり気候変動による乾燥と気温上昇の影響が大きいだろうと思う。これによってオーストラリアでは,地球温暖化への危機感が増し,多くのデモ行進がなされたようだ。

 

コアラやカンガルーなどのオーストラリアにしか生息しない貴重な動植物も,ヒトの身勝手な活動のせいでヒト以上の相当な被害を被っている。推定によるとこれまでに焼け死んだ野生動物の数は12.5億匹にも登るとか。

 

コアラやカンガルーの話もいたたまれないが,私としてはカギムシやトタテグモのようなこれまた希少で貴重な地球の財産が時々刻々と失われつつあることに胸騒ぎが収まらない。どうか,どうか,少しでも多く生き延びてほしいと祈るばかりである。

 

www.nytimes.com - The New York Times

 

これほどの,地球の未来を左右するほどの,大惨事にもかかわらず,日本での報道は非常に少ないように感じる。気候変動が孕む問題の重要さ・危急さを理解できていないとすれば,これほど能天気な話はない。最近の日本は,国際的な行動にどうもわがままさが目立つ。自己中すぎやしないだろうか。日本のことだけ考えていれば良い時代は終わった。アメリカに追従する従順な奴隷も,今代首相はよくもまぁ恥ずかしげもなくできるものだ。見ているこっちが恥ずかしい。

 

我々の立つ地球は,閉じられたシステムである。我々は互いに大いに影響しあって生きており,地球規模の問題は必ず自分の問題として還ってくる。地球温暖化を始めとする環境変動の問題も,海洋のプラスチック汚染の問題も,原発事故が招く放射能汚染の問題も,生物多様性の減少が孕む生態系サービス衰退の問題も。

 

www.wwf.org.au - WWF

まずは,地球上で起こることの全てを自分のこととして捉えるよう皆が心がけるべきだろう。オーストラリアの山火事についても,WWF に寄付をするなど,個人レベルで行えるアクションはある。

 

 

見聞読考録 2020/01/13