見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

The last day at Longyearbyan, thus at Spitsbergen

スピッツベルゲン島最大の都市,ロングイェールビーンに滞在してからはや 4 日が経った。
最後をくくるにふさわしい,ゆったりとした,それでいて実りのある滞在だったと思う。


14 日 12:00 にニーオルスン(Ny-Ålesund)をセスナで発ち,1 時間ほどのフライトを経て,ロングイェールビーンに到着した。オランダのチームのうち最後まで残っていた僕を含めた 4 人全員がこの便で発った。


ロングイェールビーンの空港から街までの 5 km ほどの道のりを徒歩で行く。途中で,浜に打ち上げられたタイセイヨウダラの死骸にシロカモメが群がる現場に遭遇した。今年生まれた雛もすっかり大きくなって,大人すら追い払って餌を横取りする様はなかなか見ごたえがあった。


しばらく街をぶらぶらしたあと,Kroa というレストランで,オランダのチームと最後の食事をした。クジラやアザラシを狩って暮らしを立てていた頃の古き良きロングイェールビーンを再現した内装は,これぞスピッツベルゲン島!とすら思わせる。地元限定の黒ビールも最高に美味い。17:00-19:00,楽しいひと時はあっという間に過ぎ,オランダ人らしい熱いハグを全員と交わして,僕を除く皆はまた空港へ。2 ヶ月も島に滞在して,これからまだロングイェールビーンに滞在しようなどという酔狂な人は,僕だけらしい。


最初の宿は Mary-Ann's Polarrigg。安宿の予約がいっぱいだったので,知人に勧められるまま予約した。正面のたくさんのトナカイの角が飾られた木造の門は,シャーマンのいるどこかの部族の村の入口のよう。それをくぐると,1970 年代を思わせる古びたトラックや,小型の古い木造船舶を改造したテラスなど,異様な雰囲気を纏った広場に出る。チェックインを済ませ建物の中に入っても,炭鉱の道具が並べられ,炭鉱が栄えた当時の白黒写真が所狭しと貼られ,その異様さは健在であった。洞窟のような意匠を凝らした狭い通路を抜けると熱帯の植物が植えられた温室のカフェに出たり,終いにはシロクマの上半身が廊下の壁から突き出していたりと,非常に刺激的な,それでいて悪趣味でない,不思議な空間を作り出していた。あれなら 1 週間泊まっても飽きることはないだろう。


翌 15~18 日 までは,街から 1.5 km ほど山合に入った Gjestehuset 102(Guesthouse 102)という宿に連泊した。ロングイェールビーンで最も安い宿である(それでも高いが)。狭い部屋に 2 段ベッドが 2 つ。暑苦しい 4 人部屋であったが,同室の客が皆良い人だったので,とても快適であった。宿のスタッフも非常に親切である,ニーオルスンに向かう 6 月に利用したのも,ここであった。


近くには Coal Miners' Cabins という宿が経営するレストラン Coal Miners' Bar & Grill がある。落ち着いた雰囲気の,趣味の良い内装が特徴的なレストランである。おそらく炭鉱時代に流行ったのだろう,ボリューム満点のハンバーガーが売りのようで,飛ぶように売れていた。確かに美味かった。他のメニューに,グリルの盛り合わせのようなものがあったので,むっちゃ高かったが頼んでみる。これも非常に美味かった,焼いたマッシュルームの味付けなどここ数ヶ月食べたことがないくらいの美味しさだった。ちょっとお腹がびっくりするくらいの量を出されたのには面食らってしまったが。


そして,宿のチェックアウトを終えた今日も,11:00 くらいから Coal Miners' Bar & Grill にお邪魔している。青い目を眼力鋭くカッと見開いたぶっきらぼうな痩身の男性が切り盛りしており,はっきり言って注文するのもちょっと怖い。


勇気を振り絞ってコーヒーを注文し,財布を取り出すと,


眼力:"Don't worry about it. Don't worry about it"


...ん?


気弱:"O..okay?"


ニコリともせずにぶっきらぼうに言われて面食らってしまったが,要するにサービスしてくれたらしい。
良い人やん,怖い顔してるけど!


さっきハンバーガーを注文したときも,ニヤッとされた。なんでやろ。
ともかく,あとでちゃんとお礼を言わなければ。


と,これだけのために投稿をひとつ。
皆さんも,ロングイェールビーンへお越しの際は,是非 Coal Miners' Bar & Grill へ。


見聞読考録 2017/08/18