見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

最後の遠出

昨日今日と,1 泊 2 日の山歩きに出てきた。総距離,およそ 32 km。基本的に平坦なので,距離の割に非常に楽である。


初めての土地で,初めてのキャビン泊。午前 3 時まで歩き続けたというのも,山小屋に泊まって午後まで眠り続けたのも,初めてであった。大人になってもまだまだ知らない世界に出会えるということは,本当に幸せなことであると思う。


月曜には帰ってしまうので,帰還後に土曜限定の Bar を,最後に覗いてきた。帰りたくないなぁ寂しいなぁという思いもよそに時は過ぎ,現在時刻 02:03。


帰ってきたのはほとんど真夜中であった。遡ってみると全く訳のわからない,白夜ならではの山歩きだったと思う。


まず,出発したのが,昨夜の 21:15。日中は日中で僕は調査に出ていたので,ゾディアックボートを自分で運転して対岸の島に渡ったり,池を巡ってプランクトンを採集したりして,1 日中動き回ったあとに出発した。この時点ですでにおかしい。


で,12 km 先のキャビンまで歩いて,到着したのが AM 03:00。1 日中部屋にいたはずの同行者が先にへばって,余計な荷物まで僕が持つってのはどういうことなの。キャビンに着いてからも,火を炊いたりお菓子をつまんだりしていたので,結局 AM 04:15 まで起きていた。


同行者の 1 人と同時に目を覚ました。枕元の腕時計を見るとまだ朝の 6 時過ぎだという。なんだか妙にすっきりする,完璧に回復した,2 時間くらいしか寝てないのに,これってすごくね?と思いながら良く見たら,腕時計が上下逆だった。12:45 起床。いや,心底びっくりした。キャビンのベッドが快適すぎた。そりゃすっきりもするだろうよ。


同行者の 1 人が主に,美味しいハンバーガーを作ってくれた。キャビンにはガスコンロもあったし,ストーブも立派だったし,いろんなものが用意されていて快適だった。コーヒーを入れてだべっていたら,いつの間にかすっかり遅くなっていた。本日の出発時刻 16:15。おい,もう 1 日終わりそうじゃねぇか。日本の山登りだったらそろそろ下山してないとやばい時間だよ?


にも拘わらず,基地のある Ny-Alesund とは真逆に向かい,まずは半島の尖端へ。18:00 になってようやく到着した。本日の最終目的地 Ny-Alesund まで,17 km ほど。昨夜泊まったキャビンからなら,14 km くらいだったんだけどね,どうしたもんかね。大海の水平線を望む半島の尖端は,岩だらけで,真っ平らで,来た道を振り返ると氷河を湛えた茶色い山々が遠く聳えていて,それはそれは不思議なところだった。まさに世界の果てという言葉がふさわしい,そんなところ。


真夜中までに戻ると,衛星電話を使って基地のスタッフに伝え,ようやく帰路につく。この先は速めに歩こう,とか行ってるくせに,いっこうに速度が上がらない。


Look at this stone!!


Awesome!!
It's so pretty!!


Oh, this is a fossil!!


Yeah!! Cooool!!
It's a coral!!


Umm, should I take it?
Umm.. but, it's a little bit heavy.. umm..


いろんなものに目が止まるのはわかるけど,なんでいちいち止まるの!?歩きながらしゃべって!できるでしょ!


夕飯(PM 07:00)までには帰れるとか言ってたのに,結局真夜中まで歩くことに。同行者の 1 人は最後の方は,10 分に 1 度のペースで足首と膝のマッサージをしながら,ほとんど泣きそうな顔をして歩いていた。それとも,夕陽のように美しい真夜中の太陽を見て,泣きそうなほど感動していただけかもしれない。


おっと,もういい加減に寝なければ。ずっと外が明るいと,元気なうちは,うっかり遅くまで起きてしまっていけない。明日はいよいよ,荷物を詰める予定。おやすみなさい,現在時刻 AM 02:41。


見聞読考録 2017/08/13