「ストロベリー！！」
野外調査への長旅から帰ると，顔を合わせるなり受入研究者が突然，叫びだした。
言っている意味がわからない。
「え，なに？」
と，聞いてみる。
「いやだから，ストロベリーはほら，果物の王様で，赤くて甘いあれだよ」
いや，知ってるよ！
そうじゃなくて！
食堂に行ってみると，デザートに生のイチゴが出ていた。
おお，なるほどね。美味しそうだね。
なんて，悠長に見ていた時期が私にもあった。
美味しい。いやもう美味しいなんてもんじゃない。
こんなに美味しいイチゴをこれまでに食べたことがあっただろうか。
煮込んだ魚の切り身，焼いた肉，蒸したじゃがいも，乾燥したパンとフレーク，切っただけのチーズとハム，茹でたメキャベツとニンジン。
考えてみれば，もう長いことフレッシュなものを口にしていなかったような気がする。
いつからだろうか，そういえば果物のくの字も久しく目にしていなかった気がする。
生野菜すら例外ではない，ここのところずっとずうっとしなしなしたものばかりを食べていた気がする。
今日はそう，何週間かぶりに基地に食料が届いたのだ。
何やら１日中，コンテナを運んでいるなとは思っていたが，そういうことだったらしい。
「ストロベリー！！」
食堂では皆例外なく，我先にとイチゴに群がっていた。
ここではイチゴは，外からの便りを知らせる，とても特別な食べ物のようだ。
見聞読考録 2017/07/18
