見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

アパルトヘイトと差異の承認の政治 ー 亀井伸孝氏による論説

昨今,世間(全世界)を騒がせている,曽野綾子氏による人種差別発言が繰り広げられたのは,2015年2月11日の産経新聞の朝刊でのことだった.


「もう20〜30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった。」
「爾来、私は言っている。「人間は事業も研究も運動も何もかも一緒にやれる。しかし居住だけは別にした方がいい」」


どう読んでも好意的に捉えようがないほど,偏見に満ちた悪質な発言である.弁解の余地などかけらも見当たらない.曽野綾子氏が他に何をなした人かは知らないが,この記事一つで,これぞレイシスト,と呼んで差し支えない最低の人物であると僕は判断した.さらに,これをすんなり掲載してしまう産経新聞の酷さも目に余る.編集者のレベルの低さが透けて見えるようだ.


そんな時代錯誤のレイシスト曽野綾子氏は,なんでも "第2次安倍内閣における教育提言を行う私的諮問機関(教育再生実行会議 - Wikipedia)" である教育再生実行会議のメンバーであるそうだ.すなわち,安倍晋三氏のアドバイザーと言える.こんなとんでもない愚者が,首相と深く関わっているのだから,嘆かわしいを通り越して呆れるほかない.それも一重に,安倍晋三氏が首相として全くふさわしくない人物だからこういうことになるのだろうが.


曽野綾子、海外メディアからの人種差別コラム批判に「安倍首相のアドバイザーだったことはない」と逃亡するも再び炎上 - BUZZAP,2015/02/17


一方で,そんな呆れ果てるような発言に対する,亀井伸孝氏の論説が素晴らしかった.論理的で,無駄なく,美しい.ただ怒りに任せて書きなぐる,僕の文章とはわけが違う.研究者として社会にも大きく貢献している.亀井伸孝氏が他に何をなした人かは知らないが,この記事一つで,これぞ研究者と呼んで差し支えない人物と思った.


「文化が違うから分ければよい」のか―アパルトヘイトと差異の承認の政治 - 亀井伸孝(文化人類学,アフリカ地域研究),2015/02/25(SYNODOS)


多少小難しい部分もあるかもしれないが,この情報は信用に足る.そういう,文章の書かれ方をしている.


できる限り多くの人に読まれるべきと思ったので,ご紹介.微力ながら.


見聞読考録 2015/03/04