見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

川那部浩哉博士のインタビュー

面白い記事を読んだ。

 

前川光司・渡辺勝敏(2020)インタビュー「先達に聞く」:川那部浩哉.魚類学雑誌 67: 138–156

 

歴代の大先生がたくさん登場し,戦後日本の生態学がいかに形成されてきたかを垣間見れる。同時に,日本の生態学の未来に思いを馳せた。

 

私は昔から,面白い生命現象や学説・仮説の類に目がなかった。しかしどれほど自然科学に興味を持とうとも,現象の発見者や学説の提唱者には,まったくと言って良いほど興味がなかった。ヒトが嫌いなのだ。昔は特に嫌いだった。

 

ところが,最近はどうだろう。現象そのものと同じくらい,偉業を成した学者の生まれや生い立ち,科学的発見を成すまでの経緯に面白さを見出すようになった。伝記や自伝,ひいてはヒトの歴史そのものがこれほどまでに面白いものだとは,思いもよらなかった。

 

年を取るとはこのことだろうか,今では次第にヒトもなかなかに面白い研究対象だと思うようになってきている。根本的なヒト嫌いは治ってはいないが。。

 

見聞読考録 2020/05/01

オンライン授業のアレコレ

疫病のパンデミックは有史以来,様々な局面で猛威を奮ってきた。近年のものとしては,下記が代表的と言えよう。


1918-20 年 スペインかぜ(インフルエンザ A/H1N1)

1957-58 年 アジアかぜ(インフルエンザ A/H2N2)

1968-69 年 香港かぜ(インフルエンザ A/H3N2)

2002-03 年 SARS コロナウィルス/SARS-CoV

 

しかし,私にとっては今回の新型コロナウィルス/SARS-CoV-2 ほど身近に感じたことはない。今まさに歴史的な事件を体感しているのだと思う。

 

そんな中,私の勤務する京都大学もいよいよ「レベル3」の警戒態勢にランクアップされてしまった。つい三日前,4月18日のことであった。

 

「会議」や「課外活動」などいくつもの項目に渡り規則が書かれているが,そのうちの「職員の勤怠」に限ると下記のようになっている。

 

Level 0: 通常

Level 1: 通勤時の混雑を回避しつつ,時差出勤を推奨する。

Level 2: 執務室における人の密度を抑制するため,必要な業務の見直しを行いつつ,在宅で可能な業務は在宅勤務を推奨する。

Level 3: 運営上必要な業務を絞り,執務の体制を分割し,出勤と在宅勤務と交代で実施する。

Level 4: 非常に優先度の高い最小限の業務に従事する職員のみ出勤し,他は,原則として,在宅勤務とする。

Level 5: 緊急に出勤を要する最小限の要因以外,原則として,全ての職員の出勤を禁止する。

 

家でできることは家出やる,ということだろう。ウィルス拡散防止の手立てとしては真っ当で,仕方のないことであると言わざるを得ない。

 

しかし,滅多にない事態である。とりわけ,授業を持つ教員にとっては,講義にかかるただでさえ膨大なコストをさらに上乗せする厄介な状況になっている。

 

とはいえ,他に方法はない。これを機に授業のオンライン化について真剣に考えてみるのも良いかもしれない。オンライン授業の良いところは,学生がわざわざ決められた時間に出席する必要がないこと,講義を録画してアップロードすれば学生はわからなかった部分を何度も見返すことができることなど,いくつもある。教員にとっても,前年の講義を録画した動画を使い回すことでコストの削減を目指すことができるかもしれない。

 

そんなわけで,オンラインの講義や講演の取り組みをいくつか紹介したい。私も時間のあるときに,少しずつ楽しみながら見ている。本当に楽しい。

 

まずは京都大学松浦健二教授の講義。危機に逸早く対応する柔軟性が素晴らしい。私も登録させてもらえるのだろうか。。

 

次は,同じく京都大学春秋講義。新型コロナウィルスよりずっと前から行われていた試み。先見の明があるというのはこのような例を指すのかもしれない。

 

界隈では,European Society for Evolutionary Biology も全ての学会講演をウェブ配信するという画期的な試みを行っている。例えばこれ,ESEB 2019。TED みたい。

 

新型コロナウィルスの蔓延を事前に予期した人は少ないだろう。ましてやそれを待ち望んだという人は皆無に違いない。そんな非常事態の中で,私たちはピンチをチャンスに変えることができるだろうか。部屋に籠もっていようとも,なすべきことをひとつひとつこなしていきたい。新しいことにチャレンジできればなお良い。

 

欲を言えば,パンデミック以後の時代の生き方をひとりひとりが考えてみるべきだろうと思う。ただ単純に,「経済が V 字回復」とか,「パンデミック以前の水準に」とか,そういう終わり方をしてはいけない。新型コロナウィルスが登場する直前まで,我々が直面していた地球温暖化や環境汚染の問題は何ひとつとして解決しておらず,それらに対処するためには経済活動の在り方を問い直す以外にない。今回の非常事態が,我々の生き方そのものを問う機会になれば良い。心からそう思っている。

 

 

見聞読考録 2020/04/21

パンデミックを生きる指針

藤原辰史・京都大学准教授の文章が素晴らしい。

歴史的なパンデミックの最中にいる私たち全員にとって,必読のものと思う。

 

ここに紹介しておきたい。

www.iwanamishinsho80.com

 

見聞読考録 2020/04/11

日本の感染症床使用率

素晴らしいサイトがある。都道府県別の感染症床使用率を明示したサイトである。

 

www.stopcovid19.jp

現在,我々が置かれた状況がいかに逼迫したものかがひと目でわかる。東京,神奈川,京都,福岡などではすでに COVID-19 の入院の必要な感染者の数が用意された病床の数を超えているということが見て取れる。

 

これはつまり,治療の必要な重篤な患者が,満足に医療処置を受けられないということを示している。医療崩壊に近い危機的な状況にあると言える。

 

この先はもしあなたが,あるいはあなたの身近な人が COVID-19 に罹患し,人工呼吸器をつけなければならないほどの重症となったとしても,満足に処置を受けられなくなるかもしれない。対処に追われる医師が涙を流しながら,あなたの親しい人につけている人工呼吸器を外し,新しく運ばれてきた意識のない若者につけ直すのを,どうすることもできずに眺める日が来るかもしれない。

 

日本の人々の危機感があまりにないように見えるので紹介しておきたい。

 

 

見聞読考録 2020/04/07

Zoom meeting

新年度,研究室の活動が始動した。

これまでにない,異様な新年度である。

 

まず,研究室に無闇矢鱈と来ないように,とのお達しがあった。これだけをとっても,学生に対して顔を見せるようにと激励するラボが多いだろう通常時と比べて,異様であると言える。

 

それほどの危機に,我々は今生きているのだ。1918 年に流行したスペイン風邪以来の危機である。

 

そんなわけで,研究室の最初の活動は Zoom を用いて行われた。自宅などからの自己紹介に始まり,廃液処理やセミナーの係を決めるなど,基本的なガイダンスであった。

 

Web 環境如何によって時折,音声に乱れが入るものの,概ね使い勝手の良いサービスであった。遠隔地を繋いだ飲み会にも使えそう。

 

 

見聞読考録 2020/04/05

京都大学山極総長の祝辞

COVID-19 のパンデミックを鑑み,京都大学でもおよそすべての集会が中止されている。特に卒業式や学位授与式,そしておそらくは来る入学式の中止は,当事者にとってさぞかし辛かろう。これを受けて,京都大学総長・山極壽一博士による祝辞が,ウェブ上に公開されることとなった。

 

京都大学令和元年度学位授与者への総長祝辞 山極壽一(京都大学総長)令和02年03月23日
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/ceremony/r01ceremony04

 

京都大学令和元年度卒業者への総長祝辞 山極壽一(京都大学総長)令和02年03月24日
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/ceremony/r01ceremony03

 

これほどの内容を,無料で見聞きできることに感動を禁じえない。時を置いてこの先も何度も視聴することになるだろう。

 

この度の COVID-19 は,世界に破滅的な変化を与えることだろうが,私としては良い変化も多少は期待している。例えば今現在,世界中で行われている移動制限や経済活動の停止によって,人類の排出する CO2 の量は産業革命以降ではほとんどありえないほど激減している。大気や水質の汚染,森林伐採の問題も一時的に解決され,公害によって失われるはずだった多くの命が救われているという試算もある。

 

企業の会議もウェブ上で行われるようになり,ウェブ上を介した会話や交流によって,人々は物流やヒトの移動のコストをかけずに楽しむ術を身につけつつあるように思う。地球温暖化や環境汚染など,将来的には人類の絶滅まで引き起こすだろうと想定された数多の問題が,世界的な経済活動の停止という未曾有の事態によって改善しているという見方もできるのだ。

 

東洋や欧米などで起こっている感染者のオーバーシュートと医療崩壊は,COVID-19 による数多の犠牲者を生み続けており,この波は近く日本を始め多くの国々を混乱に貶めるだろう。この度のパンデミックがどれほどの犠牲者を出すのかは,これからの我々の行動にかかっている。

 

しかし何年かかるかわからない収束の後に,パンデミック以前の日本にただただ舞い戻ってしまうのは,愚かなことだと思うのだ。大学や企業の会議など,全て Skype で自宅から参加すれば良いじゃないか。診察を受けるのだって,病院に足を運ばずとも良いじゃないか。スクリーン越しに初診を行えば,遠方からだって医者の意見を聞くことができるし,医療者が感染症にかかってしまうというリスクを軽減することだってできるはずじゃないか。

 

大量生産・大量消費,薄利多売の時代に終止符を打ち,持続可能で幸福な社会の実現に向けて,誰も過労で死ぬことのない世の中の実現に向けて,自らの生活基盤を改める時に来ているのではないだろうか。

 

 

見聞読考録 2020/03/28

COVID-19 Map in New Zealand

このサイトは,恐ろしく見やすい。仕事が早い。早くてきれい。

 

covid19map.co.nz

情報の氾濫する現代において,本当に必要なものを見やすく提示することの重要性を思い知らされるようだ。

 

 

見聞読考録 2020/03/28