見聞読考録

進化生態学を志す研究者のブログ。

暖炉の火

ニュージーランド/北島の学園都市・パーマストンノースの冬は,どうやら雨が多いようだ。そろそろ6月に入ろうというこのところ,毎日のように冷たい雨が降っている。寒空に降りしきる灰色の雨を見ていると,寂しくも美しいオランダの冬を思い出す。

 

夜になると,暖炉に火を入れる。薪を組んで燃やすのも手慣れてきた。美しく組んだ木々が燃える様を見ていると,だんだんカルシファに見えてくる。そして「綺麗な火だねぇ〜」と,声をかける。このところの日課である。

 

今日も我が家は平和である。

 

 

見聞読考録 2019/05/30

コーヒー + エタノール

標本整理を進める昨今。貝類や昆虫の液浸標本を作るには,エタノールを使う。

 

組織を保存しようとするのなら,70% ほどのエタノールに漬ける。DNA を保存しようとするのなら,筋肉などの組織を100% に近いできる限り純粋なエタノールに漬ける。

 

単純だが,とても大事な行程である。特に DNA 解析用のサンプルを長期保存しようとするなら,ここで手を抜くのは致命的となる。

 

浸した組織には当然,水分が含まれている。それを純粋エタノールに漬けても,組織の水分で希釈され,保存液であるエタノールの純度が下がってしまう。

 

よって,一度エタノールに浸した数日後に,純度の下がってしまったエタノールを交換する。そうすることで,エタノールの純度を高く保ち,DNA の長期保存を可能にするのである。

 

今日は,そういう作業をしていた。昆虫のエキスが溶け込んだエタノールを廃液用のカップに捨て,新しいエタノールを加える。ラベルを入れ,フタを閉じる。淡々とした流れ作業である。そして,事故は起きた。

 

疲れたので,コーヒーを飲む。すぐに吐き出した。

 

なんだこれ,まずい。強烈なエタノールの味がする。なんだか不思議なエキスが溶け込んでいる気がする。お,おえぇぇぇ。。

 

途中から無意識にコーヒーのカップに古いエタノールを捨てていたらしい。酷い目にあった。

 

奥の方に何かまだ残っている気がする。。う,うえぇぇぇ。。

 

 

見聞読考録 2019/05/29

冬支度

パイン材やら Cupressus macroparpa(マクロカルパ)やらの薪を 4 m^3 まとめて 450 NZD で購入した。今月始めのことである。

 

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NZ はすっかり秋めいて,雨降りの日などはすでに肌寒いほどである。ついに暖炉に火を入れるようになり,二度目の冬を間近に感じるようになった。

 

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気づいてみればこちらに来て、もう 9 ヶ月も経ったらしい。早い。あまりに早い。しかしとても充実した 9 ヶ月であった。フィールドシーズンも終わりに近づき,もうそろそろ室内の実験に取り掛かりたいところ。

 

言った側から,明々後日から一週間以上も調査旅行に出かけるんだけれども。今シーズン最後のまとまった調査になる予定なので,許してほしい。

  

見聞読考録 2019/04/29

 

イースター・デイ!

今日は,イースターである。春分の日の後の最初の満月の次の日曜日に行われる祝の日だ。

 

日本語では,復活祭と言う。イエス・キリストが,十字架に架けられた三日後に復活したことを祝う日として,海外ではクリスマスよりも重要視されているとも聞く。

 

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二年前にベルギーのアントワープ動物園を訪れた時も,ちょうどイースターの時期で,動物園にイースターの飾り付けをしたのか,それともイースターのお祭りに動物を持ち込んだのかわからないくらいに,盛大に祝われていたのを覚えている。

 

ここニュージーランドでもやはり,重要な祝日であるようで,年末年始すら休まなかったスーパーマーケットも,軒並み店を閉じていた。イースターの前の金曜と後の月曜も,基本的に休みだ。金曜に大学に行ったところ,廊下まで暗くてびっくりしてしまった。

 

このお祭りが日本に持ち込まれるのはいつになるだろうか。理由も知らずにお祭り騒ぎをするのが好きな人が多いようだから,上手く踊らせれば定着してもおかしくはないと思う。旗手は誰になるだろう。鶏卵業界だろうか,それともバレンタインデーのようにまたチョコレート業界が流行らせるのだろうか。

 

僕は踊るのは苦手だ。どちらか選ぶとしたら踊らせる側になりたいと,いつも邪に眺めている。

 

見聞読考録 2019/04/21

調査許可

やっと調査許可が下りた。かれこれ半年くらいかかっただろうか。

 

これまで私有地や市町村の管轄する森林を狙って,ちまちまと許可を申請し調査してきたが,これで DoC の管轄する国有の保護区をドカッと調査地にできる。何せ並み居る国立公園など 26 もの保護区内での調査許可が,いっぺんに下りたのだ。いやはや長かった。

 

やったぜ!やったるぜ!

 

 

見聞読考録 2019/04/18

『歴史はべき乗則で動く』/『異端の数ゼロ』

手元に現物があるうちに,書いておこうと思う。ずーっと昔(四年前くらい?)に読み始めて,最後の方まで読んだのに,読みきる前になぜか放ったらかしになっていた本を二冊読んだ。

  

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歴史は「べき乗則」で動く

マーク・ブキャナン(Mark Buchanan・著)

ハヤカワ文庫

 

異端の数ゼロ

チャールズ・サイフェ(著)

ハヤカワ文庫

 

ハヤカワ文庫の「数理を愉しむシリーズ」読んだのはこれが初めてだが,どちらも素晴らしかった。世界の見方が変わるような本であった。強いて言えば "ゼロ" の方が読みやすいかな。多くの方に,おすすめしたい。

 

難しい話ではある。それをこれほどまでにわかりやすく,退屈することなく読ませるとは,プロのサイエンスライターの凄さを垣間見るようだ。一線の研究者が書く本ももちろん素晴らしいものが多いが,研究者への負担が大きい。研究者の出す実際の研究成果に対して,世に出回る情報がどうしても限られてしまう。その点,サイエンスライターという職業は,科学の難しい話を一般にわかりやすく語ることを専門としている。一般的に言って科学の面白さを伝えるという点においては,本職の研究者よりも一枚も二枚も上手と言えるだろう。

 

日本ではまだ見られない職業だと思う。いずれは日本でも本職のサイエンスライターが当たり前となるくらいに,科学が身近に感じられる世の中になると良いと願う。まずは,ここで紹介した二冊をもって皆さんも,科学の深みを,それから我々の生きる世界の深みを,じっくり味わってみてはいかがだろうか。

 

見聞読考録 2019/03/30

『湿地帯中毒』

中島淳博士の書かれた自伝「湿地帯中毒」をいただいた。前々から読みたい読みたいと思っていた本だったので,嬉しい限りである。しかもサイン入りでいただけるとは思いもよらなかった。僕は購入するつもりで声をかけたのに,ささっと送っていただけるとは,なんてデキた人なんだろう。かっこいい。ああいう大人に僕もなりたい。結局なんだかおねだりしたみたいになって,ごめんなさい。

 

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先日の生態学会の一般講演会で初めてお会いし,演者として一緒に登壇した。お話も面白く,会場の笑いを爽やかに攫っていく姿が印象的であった。

  

古くは「くろむし屋」という黒魔術的なウェブサイトを運営されていた「湿地帯の貴公子」こと「おいかわ丸」さんとしても,有名な方である。今回は十分に話す時間がなかったが,物腰の柔らかさと爽やかな笑顔の裏に危険な香りを漂わせ,ちょうど「くろむし屋」のウェブサイトのように,只者ではない雰囲気を醸し出していたように思う。

  

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↑「おいかわ丸のくろむし屋」のウェブサイト

http://kuromushiya.com/

  

ぱらぱらとめくっただけで,マニアックな湿地性生物がこれでもかと登場しており,これまた「くろむし屋」の雰囲気が漂う。何より仕事量が凄まじい。手に取っただけで迫力の伝わる力作であるのがわかる。読むのが非常に楽しみである。

  

これはアタリの匂いがする。読む前に言っても説得力がないとは思うが,生き物が好きな方なら一冊手元に置いておいて損はないと思う。是非,ご一考されたし。

  

中島さん,どうもありがとうございました。大切に読ませていただきます。

 

中島淳のページ
http://kuromushiya.com/koushiki/top.html

 

見聞読考録 2019/03/29

一時帰国

学会やら何やらのため,帰国している。今日はこれから,静岡に発つ。

15:00 から一般向けの講演を行う予定。

  

日付|03月24日15:00- 一般向け講演

題名|或るカタツムリ研究者の冒険奇譚

場所|静岡県立ふじのくに地球環境史ミュージアム

 

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お時間の或る方はお越しください。

  

見聞読考録 2019/03/24

友人のブログ

友人が書くブログ「ECOSTATS」が面白い。有名な学術雑誌に自身の論文を載せ,学会の大賞を受賞し,若くして才能を開花させている努力の人。自慢の友人である。

  

多少小難しいところもあるが,少なくとも科学界隈の住人には面白く読んでもらえるだろう。久々に開いてみたら,良い記事が増えていたので,覚え書きとともにご紹介。

  

とにかくいろいろとすごい。そしていろいろとおめでとう。見習うところの多い友人である。

  

見聞読考録 2019/03/23